無防備な姿 ページ5
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Chishiya side 〜past time〜
「…なーに疲れた顔してんの」
ゲームから戻ってきて、大広間のソファーに横たわるAを見つけた。
思わず話しかけると、ピクリと警戒した素振りを見せたA。
自分だとわかると直ぐに
「なんだ、チシヤかぁ。」
とへにゃりと笑う。
「なんだ、ってなにさ」
「なんか他の…こわーい人達かと思った。」
ニラギとか!と大声でクスクス笑うAに、こりゃあ眠たさと疲労でハイになってるな、と小さくため息をついた。
「ねぇ、チシヤ」
「ん?」
怖くて寝付けないようで、目をトロトロさせながら俺に話しかける。
幼子のような喋り方に、ソファにもたれかかり彼女の頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細めた。
体のラインが出る水着が何となく目に毒でそっと自分のパーカーをかける。
「私今日、頑張ったよ」
「そっか。クイナが言ってたよ」
「仲良いんだねえ…」
少しだけ寂しそうな顔をしたAに、「Aと仲良くなれたって喜んでたよ」と言う。
「ドライブ…久しぶりにしたなぁ。」
「免許持ってるんだ」
「もう…。何年か前に取ったよ…。」
「おねーさんって呼ぼうか?」
くだらない会話をし続ける。
何人か、喋りながら大広間を抜けていく者もいて。
ここで寝られても困るし、と彼女の方を見ると、「チシヤ」と話しかけられた。
眠たいせいで舌っ足らずなこの口調が少しだけ可愛い。
そっと前髪をかき分けると、くすぐったいよ。と目を閉じたAが優しく言った。
「私、誰かの役に立ててるよね」
「当たり前でしょ、今日はAのお陰でみんな助かったって聞いたよ」
「でも、タクヤさんから化け物って言われちゃった…」
聞きなれない「タクヤ」という単語に思わず眉毛がピクリと動いた。
…化け物。
必死に、命懸けでみんなの命を救ったAを化け物呼ばわりか。
さぞゲームが上手いんだろうな。
そんな皮肉が頭をつらつら埋めていると、Aが寂しそうにこっちを見た。
「…誰かの役に立っても化け物だし、立たなかったら捨てられる」
「捨てられる」なんてこと、あるはずないのに。
どこかで何かの傷を負わされたのだろう。彼女は時折こういう発言をする。
まるで自分に価値がないように。
「A」
呼びかけると、唇を少し開たままAが俺の指を握りしめて眠っていた。
思わず、その無防備な姿に彼女の頭を撫でた。
「…面倒くさいなぁ」
彼女の体に腕を回し、抱き上げる。
部屋は分かっているからそこまで持っていこうとした時だった。
「…随分と彼女が大事なのね、チシヤ」
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みりん(プロフ) - がんもえさん» クイナとアンのペア、すごく好きです(;;) ただ、スペードのキングのゲーム後にクイナに冷たい態度を取っているので…仲直り出来るのか( ›_‹ ) (2023年2月7日 0時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - おむらいすさん» お母さんと交代してもらいました!暫くチシヤのターンですのでお付き合い下さい( ◜ᴗ¯)🤝(¯ᴗ◝ ) (2023年2月7日 0時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - らむねさん» 実は、参加しないのです!やっぱりこのゲームは残酷なので、2人とも生き残るのは違うかなと¯֊¯⋆꙳ (2023年2月7日 0時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
がんもえ(プロフ) - 別のゲーム会場で誰かと会うのかな!クイナとかアンに会って欲しい……… (2023年2月6日 23時) (レス) @page41 id: 828bc06f55 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - dさん» そうなんですよ…( -᷅ ̫̈-᷄ )𐑲𐑲𐑲 チシヤと鉢合わせてしまうのか、ご期待ください✨️ (2023年2月6日 23時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年2月1日 23時