小さな世界の中では、“偶然”なんてない【jw】 (ページ28)

今日:2 hit、昨日:14 hit、合計:68,318 hit

親と愛と孤独とページ28

・

目を開けると、あの家ではなかった

機械だらけの無機質な部屋で、いくつかの医療器具があった

…あの人も、とも兄ちゃんも、小さな男の子もいなかった

　「…あ、起きたかい?」

と、優しい目をした男の人が俺の話しかけてきてくれた

　「よかった。キミ、二日も寝てたんだから」

優しい声で言ってくれるけど、信用できない

いや、信用することができない

　『俺はお前が昔から大嫌いだった』

　『お前が「大嫌いだ」から』

最も近しい人、最も俺の名前を呼んでくれた人が、俺が嫌いだった

そして、俺の最愛の人を何の躊躇いもなく殺した

…俺がいたから、みんな殺されたんだ

　「んー、キミのチカラは調べなくてもわかってるから、これからまた連れて行くね」

この人はどうやら俺をあそこから連れてきてくれたらしい

「あの風の威力は、尋常じゃないしね」と、あの突き抜けた屋根のことを言っているのだから、そうに違いない

　「まぁ、今日はここでゆっくりしてていいよ。明日、行こうか」

と、あの人はここの部屋から出て行った

すると、あの小さな男の子が出てきた

　【よかったの?智洋、ここに囚われちゃうよ?】

　「べつに…とも兄ちゃんは…?」

　【…智洋が倒れた後、あの人が運んで行ったよ。

　その数分後、今さっき来た人が来たんだ。僕はなんとか智洋の体の中に入ったからバレなかった】

「危なかったんだよな～」と、独り言を言う小さな男の子

　【あ、そういえば自己紹介をしていなかったね!

　僕は、Vento(ヴェント)。よろしくね!智洋】

今、信じられるのは、ヴェントだけだ、と俺は思った

　「…うん」

・