五十八話 ページ10
刀を鬼舞辻から抜き、距離を取る。
何かがせり上がってくる感覚。それに大きく咳き込んだ。ビチャビチャとあまり気分の良くない音と共に、地面が血に濡れていく。どうやら鼻血も出ているらしく、息がしづらい。
これは、終ノ型の反動だ。寿命が削られるだけでなく、体にも影響するなんて、本当にこの技は燃費が悪い。
「げほっ……。はぁ、はぁ……っ」
一通り体が落ち着き、アイツへと目を向けた。すると、何があったのか分からないけれど、奴は私と同じように吐血していた。私達の誰かから攻撃を受けたようには見えない。
奴は、悔しそうにギリギリと歯ぎしりして、空を睨みつけ、そして拳を握りしめた。
アイツに何が起こったのか分からない。でも、こんな最高の機会を逃す訳にはいかない。
「桜の呼吸 陸ノ型 花の浮き橋……ッ!!」
その時。
アイツから、耳を裂くような大きな音がして。同時に、左肩に激痛が走った。
「うぐぅっ……!?」
倒れ込んだ痛みに呻き声を上げて、左肩を抑えた。そこには、あったはずの二の腕はなく。肩口から、溢れんばかりに血が吹き出ていた。
血の気が引いていく。血液不足だからか、右腕の指先が震えている。私の口からは、鮮血と、呻き声と、浅く早く繰り返される、か細い呼吸。とても会話ができそうにない。
死ぬのかな、ここで。こんなところで。やり遂げるって、決めたのに。死ぬ訳に、いかないのにな。
……そうだ、私。待っててもらってるんだから。
「……やらなきゃ……」
痛む体に鞭打って、ふらふらと立ちあがる。衝撃波の影響で、右耳が全く聞こえない。げほっ、とまた咳を一つこぼして、血を吐いた。
「しのぶちゃん、私、やりきってみせるよ」
刀を握りしめて、誰に言うでもなく呟く。その瞬間、一陣の風が吹いた。藤の香りを纏って。
『Aさんならできますよ』
そんな愛おしい声に、私は振り向かず、そして、地面を強く蹴った。
鬼舞辻に赫刀を突き刺したまま、離れない炭治郎くん。そこに、柱の皆が攻撃を加えていく。蜜璃ちゃんがアイツの腕を引き千切ったところで、私は刀を振った。
「__桜の呼吸 終ノ型 散り桜」
赫く染めた刀を、アイツに突き刺す。そして、抜かない。太陽が昇り、コイツが灼ききえるまで。
____太陽が、顔を見せる。
鬼舞辻はそれを横目で見て、また、あの衝撃波。
「うぐぁっ……!!」
至近距離でモロに受けた私は跳ね飛ばされて、今度こそ、瞼が下りた。
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べにしょうが(プロフ) - 天霧さん» コメント有難うございます!泣いていただけるくらい感動してもらえて感謝の極みです。とても良かったと言っていただき、とても嬉しいです。最後まで読んでいただき、有難うございました! (2021年9月26日 19時) (レス) id: f3b55f3d47 (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - もう、涙が止まりません。どうしてくれるんですか!?本当にいい作品です!本当に泣いちゃったよ(泣)。お疲れ様でした。とても良かったです (2021年9月26日 19時) (レス) @page20 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
べにしょうが(プロフ) - 憂菜さん» コメント有難うございます!すごく満足していただけたみたいでよかったです。次も何か書こうかなと思っているので、その時も是非よろしくお願いします!最後まで読んでくださって有難うございました! (2021年5月23日 9時) (レス) id: f3b55f3d47 (このIDを非表示/違反報告)
憂菜(プロフ) - べにしょうがさん» わぁぁぁぁ、とてもいいお話でした!!感動しました!!!こんな素晴らしい小説を書いてくださってありがとうございました!!!! (2021年5月23日 0時) (レス) id: dc1cce0ebb (このIDを非表示/違反報告)
べにしょうが(プロフ) - 憂菜さん» コメント有難うございます!楽しみにしてくださってるの本当に嬉しいです。投稿頑張ります! (2021年5月17日 7時) (レス) id: f3b55f3d47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べにしょうが | 作成日時:2021年4月10日 21時