日常 ページ6
「エイジ、」
編集をしている彼の名前を呼べば、
赤い髪を揺らして気怠げな瞳で私を見つめるエイジ。
「なに」
私はそんな彼にスマホを構えて愉快さから口角を上げた。
「全国のアバリスに一言、」
そんな私の言葉に、分かりやすく戸惑ったように
眉をひそめるエイジに私は喉を鳴らして笑う。
静かな室内にやけに響く時計が時を刻む音と
冷蔵庫が働いている音が、エイジの困惑を表していた。
「早く」
私が急かせば 今考えてる。という風に私をひと睨みして
制してから彼は少しだけ考えるように目線を右上に移した。
そんな彼の口角が不敵に上がったのに私は おや。と思う。
「全国のアバリスのみんな、
霧島は今日も俺に編集をやらせてふんぞり返ってる悪いやつなんだよ」
そんなことを言って泣き真似をするエイジに私は吹き出す。
「誤解デース」
「酷いよねみんな」
「うざ」
笑いながら呟いて、構えていたスマホを下ろす。
そんな私を見てエイジは満足そうに目を細めて
また編集の作業に戻り始めた。
「エイジくんは今日も頑張ってマース」
そんな締めの言葉を吐いて、録画をやめる。
顔を上げればエイジが目を丸くして私を見ていた。
「今の、上げるの?」
「そ、Twitter」
「ふーん」
何だか様子のおかしいエイジに私は眉をひそめる。
「何?」
「いや、頑張ってるエイジくんに何かご褒美とか無いの?」
やけに澄んだ瞳に見つめられて、私は笑う。
「ちゅーかハグしかないけど」
「遠慮します」
「デスヨネ。……あ、珈琲淹れたげる」
「ちっちゃ」
そんなエイジの言葉を無視して私はキッチンに向かう。
何だかんだで、エイジは私の淹れた珈琲が
好きなことを私は知っていた。
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作者名：ち ゅ ん ぴ | 作成日時：2019年2月21日 21時
