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先輩との攻防 ページ3

「小鹿くん、ちょっと来てくれたまえ」

先程までお笑いライブのDVDを真剣に見ていた楠木先輩が
テレビに目線を釘付けにしたまま俺に手招きをする。

今、この場にいるのは俺と楠木先輩だけで、
いつも助け船を出してくれるトミーや幹先輩が
居ないことに小さく焦りながら俺は楠木先輩の元へ向かう。

「なんですか、あと、俺はカンタですって」

「ん、」

テレビを見つめたまま、俺の話を聞いてないであろう
楠木先輩が心のこもらない平淡な返事をする。

「小鹿くんはさあ」

チラリと視線を移した先輩が俺を瞳に映す。

長い睫毛に縁取られた濡れた瞳に
見詰められて、俺は少し戸惑う。

俺はそんな先輩から目を逸らして「はい?」と聞いた。

「……やっぱり、えーぶい女優の胸は大きい方が良いよね」

真剣な声音で呟く楠木先輩の顔を俺は呆然と見つめた。

自分でも、間抜けな顔をしているのがわかる。

何度も先輩の言葉を反芻して、意味を理解すると
じわじわと顔に熱が集まっていった。

「な、何言ってるんですか!!」

そんな俺を見て楠木先輩は楽しそうに声を上げて笑った。

「あっははは!やっぱ小鹿くん、面白いなあ!
反応が可愛いのなんの、先輩きゅんきゅんしちゃうぞ!」

息が苦しそうに笑って目尻に浮かぶ涙を拭う先輩の姿に
俺は沸々とした怒りが沸き上がっていくを感じる。

「俺を弄って楽しいですか」

「あはは……はあ、
小鹿くん、私のこと嫌いでしょ?」

やっと落ち着いた、というように息を吐く
楠木先輩の言葉に俺は言葉に詰まる。

「……嫌いではないですよ、まあ、少し苦手ですけど」

先輩から目を逸らして言う俺の言葉に
楠木先輩は満足そうに目を細めて微笑む。

「私のことが嫌いな小鹿くんの反応が
面白いものだから、つい、弄っちゃいたくなるんだよね」

楠木先輩の一言に、自分の顔が歪んでいくのがわかる。

「やっぱ俺先輩のこと嫌いです」

俺の言葉に先輩はまた楽しそうに笑った。

「私は好きだけどね、カンタくん」

にっこりと愛嬌のある笑みを浮かべて
そう言った先輩に俺は固まって動けなくなる。

「喉乾いたなー、なんか買ってくるね、純情乙女な小鹿くん」

えーぶい女優も清純派かな?

そう言って空き教室から出ていく先輩の
背中を目で追いながら、俺はため息をはいた。

なるほど、確かにクズの木先輩だ。

先輩の恋愛論→←苦手な先輩



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ち ゅ ん ぴ(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます。私の小説で毎日楽しんで貰えるだけで十分すぎるくらいの喜びです!!続編は、今のところ作る予定なので、是非見てくださいね!! (2019年2月13日 18時) (レス) id: 022154d35a (このIDを非表示/違反報告)
ち ゅ ん ぴ(プロフ) - もみじさん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けて良かったです!続編についても、そのうちアンケートを作成するので、是非参加してください!! (2019年2月13日 18時) (レス) id: 022154d35a (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ログインをしていないのでお気に入り追加こそできていないですが、毎日楽しく読ませて頂いていました。続編、書いていただければ嬉しいです! (2019年2月13日 17時) (レス) id: 5927839365 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ - すごく面白かったです!続編ぜひ作っていただきたいです! (2019年2月13日 17時) (レス) id: a31a1084b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ち ゅ ん ぴ | 作成日時:2019年2月6日 16時

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