ちいさな恋のお話

◇　石川慎吾 ページ13

(石川side)






「ただいまー」


「...っおかえり」


「...うお！なんやなんや(笑)」







帰ってきて早々Aから熱烈なハグでのお出迎え。








こんなこと今まで１度もなかったのに
急にどうしたん、この子。








「...よかったっ、よかったねっ」


「...」


「うう、」


「...なあ、観に来てたん？」


「...ごめん」


「...や、ええよ」









シーズン始まって、思い描いていた
成績や結果はなかなか表れなくて。









そんな自分の不甲斐なさにけじめをつける
意味も込めてAには
しばらく試合は観に来るなと言ってあった。









.









そんな中、やっとの思いで出たホームラン。







ファームやろって思われるやろうし
ここからやってことぐらい十も承知やけど。








それでもやっぱり、綺麗な弧を描いて
飛んでいったボールを見て
ファンやチームメイト、もちろんAが
こうして喜んでくれているのを見ると
嬉しかったし、打ててよかったなって。









「Aありがとうな」


「私はなにも、」


「観に来るなとか言うてごめんな」


「...ほんとだよばか」


「おま、関西人にバカはあかん」


「じゃあなんだったらいいのよ」








そういって顔をあげたAは
ムスッとして、目まで真っ赤にして
心配かけてたんやなって思うと
胸が締め付けられた。









「泣き虫やな、ほんまに(笑)」


「慎吾に言われたくない」


「...それ禁句やろ」







そういってAの顔を両手で包み込めば






「...その...かっこよかった、です」


「...え、」


「...」


「あかん、ちょ、待って
聞こえへんかった今なんて？！」


「もう、うるさい」


「なあもう一回！」


「しつこいな、」


「...」


「...」


「...〜っ、今のはあかん」


「...きゃっ
ちょっ、と、慎吾待ってって」







自分からキスしといて
抱き上げたら待てってどんな拷問や。







「煽っといて往生際悪いでAちゃん」


「煽ってなんか、」


「はい聞こえない」


「...もう、都合いい」


「おう、なんとでも言え」


「...慎吾、」


「ん？」


「...好き」


「(...敵わんわ)」





ほんま一生Aには敵いそうにありません。









.






(中島さんに影響された？)
(...卓さん？なんのことや)
(素直じゃないんだから)






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