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「これ飲んだら、送るな?」
黒い気持ちに呑み込まれる前に、俺は言う。
「いえ!そんな…ひとりで帰れます。
けんじろ先生は寝ててください」
「そんな病人みたいな扱い、いらんわ」
「でも…お見舞いに来たのに、
送ってもらうなんて、できません」
「ほっか?
なら、気をつけて帰りや?
Aちゃん先生、
ちょっと無防備すぎるみたいやし…」
「え?どういう意味ですか?」
「どういうも、こういうも、あらへんがな。
今かて、男の一人暮らしの部屋に
上がり込んで…こういうのを無防備て言うの!
何か間違いが起こってからでは遅いで?」
「…間違い………?」
俺の言ってることの意味が分かったのか、赤い顔をしたAちゃん先生やったけど、何でかすぐに泣き出した。
「ちょっ!はぁ?
何で泣くん?
何か言うた、俺?」
泣きながら、バッグからごそごそと何やら包みを出した彼女は、俺の前にそれを差し出す。
「これ、先日お借りしたシャツです。
ありがとうございました……
わたし、帰ります!」
そう言ってバッグを握りしめて出て行こうとするAちゃん先生。
突然すぎて、彼女の涙の意味がまったく分からない……
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作者名:myu | 作成日時:2019年8月16日 1時