魔法使いの過去 ページ26
K-side
「…先生?…けんじろ先生………」
目の前にAちゃん先生がいる。
またそんな格好して。
足出しすぎや。
すべすべの太モモ、他のヤツに見られたらどうすんねん。
胸も、ほら、見えそうになってるやん。
ヤバイて。
あ……
誰かの手が伸びて、Aちゃん先生を連れて行こうとする。
「いや…けんじろ先生、助けて……」
泣き顔で助けを求める彼女に、俺は手を差し伸べるけれど……
触れられないまま、どんどん、遠くなって行く……………
「…夢か……」
気づけば汗だくになっていた。
窓の外からは雨の音が聞こえる。
「…痛っ……!」
わざわざ起き上がって確認しなくても、膝の痛みだと知っている。
俺からダンスを奪った、この膝の痛み。
手術しても完治することはなかった。
膝のケガがなくても、いずれは第一線を退いただろうし、今でも好きなダンスに関わって暮らしていられるから、昔のことにそんなにこだわりはない。
ただ、季節の変わり目にこうやって、
『忘れるな』
と言わんばかりに襲ってくる痛みが辛い。
特に雨の多くなるこの季節。
痛みが出ると、決まって悪い夢を見てうなされる。
夢の中で見た、Aちゃん先生の泣き顔が、頭から離れない。
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作者名:myu | 作成日時:2019年8月16日 1時