その声が思い出せなくて。(tk × in)

ep.28 ページ28

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『伊野尾さん！！！息子さんが目を覚ましましたよ！！！！』









病室の外で
ひたすら祈り続けていた伊野尾くんのお母さんと

それを支えていたお父さんが




勢い良く立ち上がった









『雄也くんは、？』









高 『先にご両親が会ってきてあげてください、』









なんて、伊野尾くんがどんな状態なのかわからなくて怖くて逃げてるだけなんだ









ガラガラっと開いてすぐ閉まったドア






一瞬 ぼー、っとした伊野尾くんの横顔が見えた









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" 慧、！！ "






" 覚えてるか！？ "









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" 母さん、.. 父さん、.. 俺、なんでここにいんの、... ? "









その言葉を聞いたとき



ブワッと涙が出そうだった









でもすぐ引っ込んだのは









" 雄也くんと海に行って溺れたのよ、？ "









この質問が聞こえたから。









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" 雄也ってだれ？ "









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気づいたら走ってた






『病院内で走らないでくださ〜い！』









そんな声も聞こえない







キーーンって耳鳴りがして



吐き気がする









目の前がグルグルし始めて

倒れそうになりながら









病院を出た









それからどうやって帰ったのか


覚えてない。






病院から家までけして近い距離ではない









正気に戻ったときは




自分のベッドに居て









立ち上がってリビングにいくと



もう家具やらなんやらが






ぐっちゃぐちゃ









なにこれ、俺がやったの...？









なにかがプツン、と切れたように



涙が溢れた









高 『けい、っ、... ぅ、』









" 雄也ってだれ？ "









その声が耳に鮮明に残ってる









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