ーPresentー

＊3＊ ページ47

・

「なぁ………」


「うん？」


会話がなくてもそれだけで暗号のように伝わるヒョンとヌナ

二人は、いつから時間が止まったままなの？


帰りのバンの中で、イヤホンをつけたまま外を見つめるヒョン

「ヒョン、何でヌナはヒョンのこと……ジョンウンって呼ぶの？」

僕がどうしても聞きたかったこと。

だってデビューしてからイェソンヒョンだよ？
なのに、本名なんて………


イヤホンを外したヒョンは、僕の顔を見て
「Aは同級生だ。だから、イェソンって違和感あるらしいぞ(笑)」

「じゃあ、いつ付き合っていたんです？」
キュヒョナがすかさず横から会話に加わる

「なに？気になるのか？(笑)」
クスッと笑って言葉を濁すから
「もったいぶらないでよっ。もう別れたんでしょ？」

「ヒョン、もしかして……復縁とか狙ってます？」

僕たちからのストレートな言葉にも笑って交わすくらい余裕で………


「復縁ね…………………(笑)」

肯定否定もないヒョンの言葉。
ズルいよ…

「じゃあ、僕たちにもチャンスはあるんですよね？」
キュヒュナがサラッと言った言葉に
「決めるのはAだろ(笑)」
最後まで冷静なヒョンにバンの中は静まり返った


＊*＊*＊

「ヒョン、写真撮られたみたい！ほらっ、あのアイドルの子。今マネヒョンと話してる…」


もちろん、事実じゃないと思うけど。
うん、信じたい。
だってヌナのこと…


ヌナ……？
両手にたくさんの衣装を抱えて、衣装倉庫に入る姿を目で追った

もしかして……………
僕の勘が外れることを願いながら、そっとドアを開ける

所狭しと並んだハンガーをかき分けると
壁に凭れて小さくなっているヌナがいた


「ヌナ…？」
隣に腰を降ろして、頭をそっと撫でた


きっと泣いてるでしょ？


「ガマンしないで泣きなよ。僕が全部受け止めるから。遠慮しないで？」

僕の言葉に、ありがとう……って呟いて小さな嗚咽を漏らした

そんなに泣くくらいヒョンが好き…？
ヒョンは、ヌナの気持ちを知ってるの？
僕じゃダメ？

今なら、言えると思った。
だけど、こんなに弱くなっているヌナに自分の思いを伝えるのは酷だと思ったから……

「ヌナ、おいで？よしよししてあげる」
僕はヌナの正面に回り込んでギュっと抱きしめた

「泣き顔は見られたくないでしょ？だから、見ないであげる(笑)」

背中をゆっくり擦ると、ヌナも遠慮がちに僕の背中に手を回してくれた


二人だけの秘密
泣きたくなったら僕を利用して
いつでも駆けつけるよ

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