１７１話 ページ23
私は吹雪の隣にもたれかかった。
ボーッとしていた吹雪は、私が隣に来ると少し驚いていた。
吹雪「明日香……ちゃん？」
明日香「戻ったんだな」
吹雪「……うん」
吹雪は“アツヤ”から“士郎”になっていた。
しかしいつもより元気がない。
明日香「あの試合で何か……あったのか？」
吹雪「……………」
まるで聞いてほしくないように、吹雪は俯いてしまった。
明日香「ごめん、聞かれたくなかったよな？
でも吹雪が今、辛いことにあたってるのは何となく分かるから…」
私はもたれかかっていた柵から体を離し、吹雪に向き直る。
明日香「だから遠慮なく私に言ってくれ。他の人には聞かないから。
いつか話してくれるまで待ってる。……“仲間”だろ？」
吹雪「………うん」
私は思いっきり明るく言ってみたが、吹雪は弱々しく返事をした。
すると、私たちの間にボールが通った。
振り向くと豪炎寺がこちらに来ている。
豪炎寺「………ボールが怖くなったか？」
吹雪「……」
明日香「え…」
ボールを持った豪炎寺は、突然吹雪にそんなことを言った。
豪炎寺「怖くて当然だ。………俺も怖い」
吹雪「……!?」
好きだからこそ……っていう意味なんだろうか。
豪炎寺らしい、サッカー馬鹿発言だ。
豪炎寺「怖さを抱えて蹴る。それだけだ」
吹雪「“怖さを抱えて蹴る”……」
豪炎寺は持っていたボールを、吹雪に手渡した。
円堂「豪炎寺！」
二人(私は空気)の間に、円堂が声をかけた。
円堂「立向居の相手をしてやってくれないかー？」
豪炎寺「あぁ！」
円堂の認めたキーパーを、この目で見れることに
内心喜んでいるらしい。
吹雪はボールを持ったままその場に固まっていた。
明日香「吹雪、行こう」
吹雪「うん」
あ、少し笑ってくれた。
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作者名：桜椿 | 作成日時：2018年5月27日 17時
