アイドルになるその前の話。【3】

【 120 】二番煎じside ページ20

家に入り、服だけ着替えて寝る用意をして、布団にくるまった。



寝ようと思ったけれど、さっきのAのお父さんの顔が頭から離れなかった。




我が子を見るその目は、すごく暖かくて優しいけれど、どこか独り立ちしていくことに寂しさを隠せない。そんな目。




目線から、果てしない愛情を感じて、16年しか行きていない俺はちょっと考えさせられた。




こんなお父さんに、俺もいつかはなれるんだろうか。




自分ではわからなかったけれど、人の家の家族愛を見てやっと気づく両親の愛。




いつか俺もお父さんになって、家族を作り、子供を大事に育てて、こんな目をするときが来たらいいなぁ。



まだ先のことは何にもわからないけれど、その時、隣にはAがいたらいいなぁ。なんて思った。




俺がひたすら尊敬してしまった、Aのお父さんは高校で化学の先生をしていて、




仕事も熱心にしているそうだ。




前に、Aがお父さんの仕事について楽しそうに話してくれたことがある。









そんな、Aのお父さんが亡くなったのは、





その年の秋のはじめだった。

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