◎550 ページ10
◎Lucas
「おかしいじゃないか！」
ダンッと机を叩く彼にため息をつく。
Unnamedのツアーを終えてから、Aは宣言通り持っていたヴィクの会社の株を俺にすべて売却した。
それから数日後、ヴィクは俺のところに来たわけだ。
応接室で彼の話を聞いているわけだけど。
「おかしくない。Aが決めたことだ。」
「でも、だって！」
駄々っ子のようになる彼に再度ため息を付き、
「"二度と関わりたくない"ってさ。」
と妹からの伝言を伝える。
「なんで？俺、何もしてない！Aに会わせて？」
ヴィクはAがUnnamedだと知らないから、自身のやらかしの自覚はないんだよな。
まぁ、AがUnnamedだって教える気もないけど。
「ヴィク、無理だ。」
そう告げれば、彼は悲痛な顔をする。
ヴィクは恋愛的な意味でAが好きだって俺は知っているから、悪いなぁとは思うけどな。
Aにはジョッシュが居るから、Aにしたらヴィクの想いはただ迷惑なだけだし、俺は兄として妹の幸せが第一だ。
あの二人は引き離せない。
ジョッシュが面倒だし、ジョッシュが怖いし、ジョッシュが…。
「ルーカスッ」
「駄目、無理、諦めて。」
「…」
「ヴィク？」
ヴィクは、何か思い詰めた顔をして、
「…帰る。」
と呟くと応接室を出て行った。
「お〜。またな〜？」
失恋は辛いよな？
でも、ヴィクは家柄良し、容姿良し、金持ちの所謂超優良物件なわけで女は選り取り見取りなはず、女がほっとくわけないし…。
うちの妹は諦めて…くれるといいな。
「マリア、どう思う？」
応接室で気配を消して様子を見ていたマリアに聞けば、彼女は首を横に振った。
「諦めそうにないね。誘拐とかしちゃうかしら？」
「マリア、冗談に聞こえない。
あのヴィクの思い詰めた顔、ヴィク…ボンボンだし、やらかしそうだよなぁ。」
「でも、ヴィクはあの子がどこにいるか知らないから…」
「あ〜、リサとアレクには気をつけるように連絡する。」
「そのほうがいいかもね…。」
この後、マリアの言うようにヴィクはやらかした。
恋は盲目とか言うけどさ。
欲しい物を手に入れるために容赦しない金持ち？権力者？って、面倒くせぇと思った。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2023年4月14日 7時
