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「男を磨いてきました。宜しくお願いします。」
そう言って頭を下げて私に手を差し出すジョングクに呆気に取られてしまった。
「
思わず、小さく呟いた。
油断していた、と言えば油断していた。
彼の気持ちを聞いたのは随分前で、それから彼は報道されるほど浮名を流していたから私のことはもうなんとも思っていないんだと思っていた。
元々一時の気の迷いだと思っていたし、メリッサに要注意とは言われたけれど、無視していればそのうち忘れてしまうと思っていたの。
打ち合わせでユンの事務所に来て、打ち合わせが終わったタイミングで部屋に入ってきたジョングク。
私もユンも誰もが彼がそんなことを言うなんて思いもしなかった。
男を磨くってなんだろ?
宜しくって何の話?
頬に手を当てて、首を傾げて彼を見つめる。
さて、どうしよう。
「ちょ、ジョングク、落ち着け!」
立ち上がり、私とジョングクの間に入ったユン。
チラリと周りを見れば、アレックスやリサがユンに厳しい目を向けていた。
「俺は、落ち着いてますよ?」
そう返すジョングク。
うん、慌ててるのはユンだよね?
「とりあえず、だ。今、ここですべきじゃないことをお前はしている。わかるか?」
ユンはそう言ってジョングクの両肩を掴んだ。
「え、そうなんですか?タイミング的にはバッチリだと思うんだけど…」
ジョングクはそう呟いた。
そんな彼の様子に、はぁと深いため息を吐いたユンは、
「絶対に"今"じゃない!マネヒョン、グクをナムのところに連れて行って。」
そう声をかけて、強制的に彼を部屋から追い出した。
「ちょ、ヒョン?」
追い出されたジョングクは焦ったような声を出していたが、上手いことマネージャーさんに連れられていった。
「A、悪かった。」
ユンがそう言って頭を下げた。
「え、ユンが謝る必要ないよ?頭を上げて。」
私がそう言うと眉を下げて申し訳無さそうな顔をしたユンはしぶしぶ頭を上げた。
「…と言うか、アレは何?」
素直な感想をこぼせば、
「なんだろうな。聞き取りはしておく。」
ガシガシと頭をかいたユンは言った。
「あ、アン、そろそろ時間だ。」
腕時計をわざとらしく見たアレックスは言う。
リサに促されて私は席を立ち、
「はぁい。じゃあ、ユン、またね。」
そう言った。
「あぁ、またな。」
ユンは苦笑いしてそう返した。
…
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作者名:ちな | 作成日時:2023年4月14日 7時