▼569 ページ29
▼
今回のロス滞在はホテルでもなく、実家でもなく、A曰くUnnamedの自宅マンション。
マンション敷地に入るには厳重なセキュリティチェックがあるし、マンションの住人は皆スタッフだから、韓国事務所と同じくらい安心だよね。
今日はリウと仕事だったAは予定時間より一時間早く終わったみたい。
メリッサが見つけたと話していた事務所近くのカフェにリサとリウと行った。
お店の雰囲気もウェイターの態度もよかった。
僕はウォヌに頼まれていたリウのサインをもらったし、気分は上々だ。
実はリウはサインを書いてくれないんだって。
まぁ、一般人…芸能人でさえ彼に会う機会はなかなかないしね。
僕が頼んだらすぐ書いてくれたけどね?
帰宅時、マンションのコンシェルジュから何かを貰っていたAは上機嫌だった。
何をもらったのかな?
でも、Aにベタベタしてたらそんなこと忘れてしまった。
「あ、」
と何かを思い出したような彼女はキッチンに行った。
何かを後手で隠しながら戻ってきたAは、
「ねぇ、ジス。約束覚えてる?」
そう聞いてきた。
約束ってどの約束かな?
首を傾げつつ、
「Aとの約束は破らないよ。」
と答えた。
Aはニコニコして僕の返答にうんうん頷いて、
「じゃ〜ん。エゴマの葉〜!」
そう言ってフードストレージコンテナを2つ、テーブルに置いた。
え、なんで?
そんなものがここにあるの?
「こっちが辛くないやつ。こっちが辛いやつだって!」
Aはワクワクして箸を僕に渡す。
「私が食べれなかったらジスが食べてくれるんだよね?」
「うん、食べるけど、コレどうしたの?」
「ジスママが作ってくれたの!」
「は?」
「食べたいって言ったら、作ってくれて…」
「いつの間に…」
僕に隠れて連絡取るなって言ってるのに、あの人は…。
コンシェルジュから受け取っていたのはコレだったんだね。
「え、一枚ずつとか無理じゃない?くっついてるよ。」
でも、嬉しそうにエゴマの葉と格闘するAが可愛いから、今回は見逃してあげるよ。
「食べられそう?」
そう聞けば、早々に一枚ずつ取るのを諦めたAは何枚かを纏めて口に入れてニッコリと笑った。
「うん、ちょっとクセがあるけど美味しい。」
そう言いながら、僕にも勧める。
「ソレは良かった。」
「レシピ、ジスママに聞こうっと。」
え、じゃあ、Aが漬けてくれるの?
それはそれで楽しみだな。
…
514人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちな | 作成日時:2023年4月14日 7時