◎567 ページ27
◎リウ
そうなるかなぁとは思っていた。
思っていたけど、さ。
「やぁ、リウ。久しぶり」
爽やかな挨拶と共に現れた彼は俺の従姉妹の肩を抱いて、彼女の荷物を持っていた。
「あ〜、ジョシュア、久しぶり。」
何故、仕事場にコイツを連れてきたんだ？と言う目を従姉妹に向けると、彼女は苦笑いして、彼から荷物を受け取っていた。
「ジスはここ、座ってて。リウ、訂正はなし？とりあえずレコーディングしちゃおうか。」
Aはそう言いながら、ジョシュアをソファに座らせると、鞄から楽譜を出し、レコーディングブースへ入っていく。
「訂正なし。とりあえず、歌ってから微調整する。」
Aにそう言いながら、ちらりとジョシュアを見れば、楽しそうにニコニコしている。
自分だってレコーディングするだろうに、何が楽しんだか…。
Aは血が繋がっているからか、言葉にしなくても、俺が何を望んでいるかが分かる。
彼女との仕事は基本"楽"なんだよなぁ。
いつものことだが、予定時間より一時間早くレコーディングが終わった。
「A、お疲れ」
ヘッドフォンを外して息をついたAにそう言えば、彼女はニコリと笑い、
「うん、リウもお疲れ。」
と言った。
Aがレコーディングブースから出てくると待ってました！とばかりにジョシュアは彼女の傍に行く。
彼はAの歌を全力で褒めていて、Aは珍しく照れていた。
二人の甘い雰囲気。
俺、居るんだけど…なんだろな。
ジョシュアが居る時のレコーディングは"色々大変だ"とルーカスに聞いていたが、こういうことか？
二人同時のレコーディングじゃないだけマシだとか、レコーディング中ジョシュアが大人しくしているだけマシだとか言われそう。
まぁ、仕事が終わってからイチャイチャするのは仕方ないか。
「あ、リウ、そう言えばさ。」
ジョシュアがAを抱きしめたままこちらに視線を向けた。
「なに？」
もしかして俺、文句言われちゃうのかな？
Aと一緒に仕事するの生意気とか？
「うちのメンバーが君のファンなんだって。サイン頂戴。」
「サイン…別にいいけど」
用意周到というか、なんというか。
ジョシュアはペンと俺の開発したゲームソフトのケースを出した。
「これに書いてほしいって渡されたんだよねぇ」
なんてのんびり言ってるけれど、ジョシュアのメンバーって怖いもの知らずなのかな？
コイツに頼み事するなんて。
なんて命知らず…だ。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2023年4月14日 7時
