◎555 ページ15
◎メリッサ
「何をされるおつもりでしたか？」
ベッドから起き上がり私は彼に訪ねた。
「既成事実を…」
目を逸らし彼は答える。
既成事実、ねぇ。
「あら。ふふ。」
思わず、笑いがこぼれてしまった。
「何かおかしいか？」
「いえ。男性的な考えだと…。」
Aは彼氏以外に身を穢されるくらいなら…と考えそうなものだし。
「男性的？」
「もし、仮にAがここに居て、貴方が彼女を穢そうとしたなら、あの子は大人しくしてはいません。」
そう、でしょう？A。
貴女、ジョシュア以外に触れられるくらいなら…。
「それは…」
「この計画を立てた時点で失敗は確実でした。あの子は…自身のパートナー以外が己に触れることを良しとはしないでしょうから。」
「パートナー、Aにパートナーが居るのか？」
「あら、ご存知ない？」
御曹司も知らないなんて…ウチのスタッフは隠すのが上手過ぎたわね。
なんて…そんなわけないわよね？
ルーカスったら、裏取引でもしたのかしら？
「じゃあ、俺は…全部、無駄だったんだな。」
意気消沈したヴィクターは、呟いた。
冷静になられたようで何より。
「ヴィクター様、Aによると彼女のパートナーは"素直"らしいですよ。」
「素直…か。」
「次のステップに進まれることをお勧めします。」
「あぁ、そう、だな。」
ヴィクターはそう呟くと部屋を出ていった。
全てはルーカスの掌の上だったのかしらね？
「メリッサ様、お車を呼びました。」
ヴィクターが出て行ってから暫くして彼の部下が私の荷物を持って部屋を訪れた。
やっぱり、ルーカスが何かしてるわね。
別に良いのだけど…。
前以て、話しくらいしてくれないかしら？
これは抗議案件じゃない？
人違いで誘拐されるなんて…。
まぁ、なかなかに面白かったけれども。
タクシーに乗り込み、電話をかける。
『無事か？メリッサ。』
第一声でそう言うなら、心配はしてくれていたのかしら？
「Yes Boss、今季、ボーナスは弾んでくれるんでしょう？」
笑いながらそう言えば、
『…OK。とりあえず、報告が欲しい。こっちに来てくれ。』
まぁ、言われずとも、タクシーの行き先は事務所だったのだけれども。
「Yes Boss」
そう返事をして、電話を切った。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2023年4月14日 7時
