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◎554 ページ14

◎Victor





女性の尊厳を傷つけることだろう。
けれど、後で罵倒されようとも…。
どうしても、Aが欲しい。
彼女に拒絶された。とわかっていたけど諦めたくない。
話さえ聞いてもらえないのなら…。

無理やり既成事実を作る。
俺の子を身籠らせれば、Aも逃げられないはず…。
この計画はクソなものだけど、Aが手に入るなら。

「捕まえたか?」

「えぇ、でも、本当に宜しいんですか?」

秘書は眉を寄せて聞いてくる。

「既成事実、は必要だ。」

そう答える。

とりあえず、もう時間が無い。
すぐに祖父達から横槍が入ってくるだろう。
早く嫁を、次代の後継者をと。
Aに拒絶されたと知られたら、すぐに別の女をあてがわれる。
自分が惚れてるのがAだから、今までスルーされていたんだ。

"後継者だから。"その恩恵は受けてきたけれど、なりたくて後継者に生まれたわけじゃない。

俺は惚れた女をパートナーに選びたかった。
権力や金や容姿で俺を見るような女は願い下げだ。
それにどうしてもAが良かった。
よく知りもしない女をパートナーにしたくなかった。

だから。






両手首をベッドサイドの柱に縛り付けられた格好でAはベッドに拘束されている。
Aには目隠しをさせた。
Aを無理やり抱くんだ。
俺の欲望に塗れた姿を見せたくなかった。
でも、Aをベッドに拘束しつつも、彼女と会話はしたくて、会話は出来るようにしていた。

「ごめん。どうしても、Aが良かった。」

そう言って、彼女の腰に縋り付く。
今から酷いことをするのに、でも、願わくば、これ以上嫌われたくなくて。

「ヴィクター様、人違いですわ。」

ベッドに拘束されている人はそう言った。
あれ、声が違う。
慌てて彼女の目隠しを取れば、Aとは違うツリ目が出てきた。

「君は…誰だ?」

俺がそう聞くと、彼女は、

「ルーカスの事務所のスタッフでメリッサと申します。とりあえず、拘束を解いてくださいませんか?」

と冷静な声が返ってきた。
Aじゃないなら、拘束する意味がないし、無理やり抱く意味もない。
俺は彼女の拘束を解いた。

「メリッサ?Aは?」

「さぁ?私はAと間違われて、ここに連れてこられました。」

手首を擦りながら、彼女、メリッサは言う。

「うちのが、間違えたのか…」

まさか、そんな初歩的なミス…。
でも、冷静になればこれで良かったのかもしれない。




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作者名:ちな | 作成日時:2023年4月14日 7時

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