309.頼ってほしい ページ9
▽Joshua
もう何日かしたら、Aは仕事で暫く国外に行ってしまう。
彼女から離れたくなくて、お休みを無理やりもぎ取って(と言っても普通に１日しか貰えなかった)、明日休みだから！と仕事終わりにAの家に突撃した。
彼女の仕事の事は口出ししない約束だから離れたくないけど、国外の仕事に行かないでって言えない。辛い。
離れがたくて家の中だと言うのに自然と彼女の後ろをついて歩く。
そんな僕を不思議に思ったのか、
「ジス、どうしたの？」
と彼女は声をかけてくれた。
Aを抱き寄せて、彼女の柔らかさと匂いを堪能しつつ、
「べつに。なんでもない。」
口ではそう告げた。
「ジスは、嘘が下手くそだね。」
腕の中の彼女が笑いながら呟いた。
「嘘、じゃない。ただ、Aが国外に行くから寂しいだけだもん。」
笑い事じゃないんだけどなぁ。
「あぁ、そっか。」
Aはそう呟いて、僕の背中に腕を回した。
「空港ファッションだか、なんだか面倒だから私は先に行くけど、多分ジス達も同じフェスに出ると思うよ？」
僕をハグしてそう話すA。
「え、」
「ジス…相変わらず、自分のスケジュール聞いてないの？」
呆れた様な言い方に、
「え、いや、その」
口ごもる。
だって、Aが仕事で国外に行くって聞いたら、自分の仕事のやる気なんて出なくて…。
「ジフンがそう話してたから…。」
「じゃあ、一緒？」
「まぁ、うん。一緒になると思うよ。」
「そっか。」
彼女と同じ場所に行ける事が嬉しくて頬が緩む。
「そう言えば、ペットカメラ…」
彼女の言葉にジフナに言われた"嫌われるよ"って言葉が蘇る。
嫌われるのは嫌だ。なんて言い訳しようか…と考えていたら、
「そんなに心配？」
とAが首を傾げた。
仕方ないから、
「うん。Aはいつもなんでも自分一人で解決しようとするから…もっと頼ってほしい。僕はAの彼氏なんだから。」
と素直に自分の気持を吐き出した。
「頼る、ねぇ」
「頼りないかもしれないけど、でも、僕はAを甘やかしたい。」
「そっか。うん、わかった」
彼女はそう言ってくれた。
「じゃあ、ジス。早速だけど…」
Aはそう言って、玄関にある段ボールを運んで欲しいとお願いしてきた。
「うん、そっちの部屋に運べば良いんだね？」
そう返しつつ、段ボールは運ぶけど…
そう言う"頼る"じゃないんだけどな。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2023年11月19日 9時
