303.侵食 ページ3
▽Yoongi
「別に内緒にしていたわけじゃないよ。ただ、そう、言わなかっただけで…。」
そう話す妹。
彼女の部屋のリビングで、当たり前のように出されたコーヒーを飲みながら彼女と話す。
妹の友人関係のチェックなんてしない。
だから、誰と仲が良いとか、誰と友人とか知らない。
別に困りはしないし、彼女の全ての友人関係を把握するつもりはないんだが、ただ妹にはやっかいな男がついている。
「ジョシュアは知ってるのか？」
Aが絡まれた時、SEVENTEENのメンバーは顔色が悪かったと、ジョシュアはAに絡んだスタッフをガン見していたと聞いた。
「え、ジス？知らないんじゃない？」
首を傾げて言う妹にため息が出た。
兄妹である俺にさえ、嫉妬を向けてくるあの男がAの異性の友人を許容できるとは思えない。
「・・・それは、良いのか？」
だから、そう聞けば、
「良いって何が？」
首を傾げて不思議そうに言う妹。
「いや、だって、アイツかなり嫉妬深いぞ。」
「え、アイツって誰？」
「お前の彼氏。」
「・・・まさかぁ。やだなぁ、オッパったら。」
ふふふと笑い出すAに、
「いや、笑い事じゃないって。」
そう言えば、
「ジスだって私の周りが皆、"恋愛脳"だなんて思ってないでしょ？」
と返すA。
確かに普通ならそうだろうな。
Aの彼氏、普通じゃないぞ。そう思いつつ、ちらりと室内を見回した。
今までAは単身者用のマンションに住んでいた。
だから、物は少なく整理整頓されていた。
現在は上は俺達の寮だしファミリー向け物件ではある。
それにしても物が多い。
その増えた物は、明らかにAの物じゃない。
玄関に当たり前のように置いてある帽子やサングラス、リビングの椅子にかけてあるジャケット…全部紳士物だ。
Aの家が彼氏に侵食されている。
「コレはどうしてこうなったんだ？」
と話題を変える。
ここに引っ越す前はカトラリーさえ1人分しかなかったAのうちが、これではまるでアイツと同棲しているようじゃないか。
「あぁ、なんか、ジスは来るたびに何か置いていくんだよね。」
深いため息をつくA。
一応、"置いていくな"と言ったんだろうな。
「そうか、」
アイツが素直に言うことを聞かないだろうことは安易に予想できた。
Aも苦労するなと思いつつ、タイミングよく兄妹二人、ため息をついてしまった。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2023年11月19日 9時
