だから、言ったじゃん。Ⅷ (ページ14)

今日:137 hit、昨日:379 hit、合計:66,483 hit

314.お近づきになりたいページ14

▽

若い頃は遊びたい。
どうせなら自尊心を満たせる相手と遊びたい。
駆け出しのアイドルを摘み食いして、将来的には安定職の金持ちと結婚したい。
一般人であるスタッフがトップアイドルに相手にされない事なんて分かってるし、駆け出しのアイドルなのは、関係を持ちやすいから。

駆け出しのアイドルからトップアイドルになれる子なんて一握りだし、どうせトップアイドルになったら、スタッフである私なんて捨てられちゃうもの。
もともとアイドルをやってる男と長く付き合うつもりなんてないから、そうね、一夜のアバンチュール的な。
"あぁ、あの人とは昔ちょっとね〜"なんて昔話を語ったりできるでしょ。

そんなわけで芸能事務所のスタッフになった。
ほぼほぼ、自分の予想通り練習生や駆け出しのアイドルを摘み食いする日々。
芸能事務所のスタッフなんて男女関係なく、私みたいな人は多い。

SUGAさんの妹、ミン氏のことを知って、欲が出てしまった。
彼女と仲良くなったら、BTSのメンバーを紹介してもらえるんじゃない？なんて、彼等が相手なら一夜の思い出も有りじゃない？なんて。
あそこの事務所は今、最高に勢いがあるからね。

だから、日本のフェスで彼女を見かけてチャンスだって思ったの。

「あの、ミン氏。」

そう声を掛けると彼女は振り向いて、私のネームタグを見て、

「JYPのイム氏、はじめまして。」

と挨拶してくれた。

「はい、イムです。はじめまして。今回のフェスは大掛かりですね。」

当たり障りのない会話をしながら、彼女を見る。
透き通るような白い肌に可愛らしい顔、人受けする柔らかい雰囲気。
スタッフにしておくには惜しい逸材だ。

「ええ。出演者が多いので、リハーサルの順番が気になりますね。」

彼女の聞きやすい丁寧な言葉に頷きながら、お近づきになりたいと思う。

「あの、何かあった時のために…」

プライベートナンバーを書いた名刺を彼女に渡そうと、そう言いかけた所に、

「Aさん、ちょっとこっち来てください！」

とHYBEのスタッフに呼ばれ、ミン氏は軽く私に会釈するとそちらの方へ行ってしまった。
あぁ、行ってしまった。
まぁ、今回のフェスでまた話せるよね？
連絡先の交換しなきゃ。

…