259.僕の居場所 ページ9
▽JUN
「なんで？僕が何をしたの？」
そう口に出せれば、答えは貰えたかもしれない。
だけど、言葉が出ない。
僕の言葉はAを傷つけちゃったから。
僕のダメな言葉を治してくれるAを僕は失っちゃったから。
本当はわかってるんだ。
Aが居ないのが現実なんでしょう？
精神的に辛くても仕事はある。
僕に今できることは仕事しかなくて、休むことなんて考えられない。
メンバーが居ない中国では、気を張っていたけれど、メンバーがいる韓国では気が抜けてしまって…。
音楽番組の出演のためにテレビ局の廊下を歩いていたら、
「ジュン、今夜食事でもどう？」
「あ、私も行きた〜い」
そう言ってベタベタと触ってくるテレビ局の女性スタッフ達。
うちのスタッフじゃないのに馴れ馴れしい。
触らないで！と言えたら、こんなに寄ってこないのかな？
あぁ、嫌だ。
彼女達を排除するのも億劫だ。
俯いて足を止めそうになった。
「ヒョン。皆はあっちだよ。」
腕を掴まれて引かれる。
「…ミンハオ」
僕の腕を引いて歩き出す彼に自然と僕の足も動き出す。
さり気なく助けてくれたミンハオを見ていれば、
「ん？なに？」
彼は首を傾げてそう聞いてきた。
「…ありがと。」
僕はヒョンなのに情けない。
ああいうスタッフでさえうまく交わせなくて、自分で自分の首を絞めて…。
ぽん、と僕の肩にミンハオの手が乗った。
「うん。ヒョン、無理しないで。」
そう言って笑うミンハオの方が、僕よりもヒョンみたいだ。
メンバーみんなの居る場所に行けば、自然とメンバーの輪の中に入れられる。
僕に意地悪をする人が居ない、ここは安心できる。
「ジュナ？大丈夫？」
スニョンが眉を下げて聞いてきた。
「うん、大丈夫だよ。」
そう答えれば、彼は笑って、
「そ。後でふり確認しような。」
と言った。
大丈夫って、ダンスのことだったのかな？
なんだかおかしくなって笑った。
メンバーはなんだかんだと言いながら、僕の傍にいてくれる。
僕の居場所はここだって教えてくれる。
Aが居なくても、僕はここに居て良いみたい。
少し肩の力が抜けた。
メンバーが暖かくて、嬉しくなった。
だから、僕は笑えた。
メンバーが居れば、僕は笑えるみたい。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2023年7月10日 21時
