だから、言ったじゃん。Ⅶ (ページ44)

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294.憧れの人ページ44

▽SOOBIN(TXT)

年上に憧れることは、ままある。
"綺麗なお姉さん"のなんと魅力的なことか。

そのお姉さんが同業者なら、まぁ冷静に対応できる自信がある。
同業者はライバルでもあるし、まだ若い僕達が彼女達にハマるなんて愚か者でしかない。

そのお姉さんが僕達の絶対的な味方である事務所スタッフだった時は、僕達は…いや僕は職業を忘れてアタックしたくなってしまう。
多分、同性同業者の誰に聞いても僕と同じ気持ちだろう。
だって僕達はアイドルなんだから。

ただ僕が憧れているあの人は、一筋縄じゃいかない。
彼女の兄はBTSのSUGAさんだし、BTSのメンバーが常に張り付いていて、アピールするチャンスなんてほぼ無い。
仕事中、会えば普通に話すことは出来るけれど、彼女のプライベートには踏み込めない。
親しみを込めて"ヌナ"と呼ぶことも出来ない。
彼女をヌナと呼んでいるのは、ジョングク先輩のみで。
噂によると先輩が自分以外の人間が彼女をヌナと呼ぶこと許さないみたい。

ヨンジュニヒョンは頑張り屋で真面目だ。
そんな彼が色々と葛藤しているのは知っていた。
でも、僕が彼からその話を聞き出すのは難しい。
ヒョンから話してくれたらいいのになぁと思いつつ、どうしたら良いのかな？なんて考えていたんだ。

「疲れた、な。」

ふと聞こえたヒョンの声。
僕が向かう先の廊下の椅子に項垂れて座るヒョンが居た。
こういう時僕はどうすれば良いのかわからない。
足を止めヒョンを見ていたら、肩をポンと叩かれた。

"任せて"

口パクでそう告げたAさんは、足取り軽くヒョンのところに歩いて行く。

ヒョンの隣りに座って何やら話す彼女。
二人の声は聞こえているはずだけど僕の頭には全然その内容が入って来ない。
たまにしか会えない憧れのお姉さんであるAさんに気にかけて貰えるヒョンが羨ましくって。

あ、頭撫でてもらってる！

僕達の立ち位置は彼女の弟というか年下男子。
今までなんとも思っていなかったけど、絶対にうまることのない年齢差が悔しい。
僕達はアイドルとしてもまだまだだし、Aさんはトップアイドルの担当だし。
僕達が…僕がトップアイドルになったら、担当してくれないかなぁ。
スタッフって選べるんだろうか。
トップアイドルになったら、Aさんと対等になれるかなぁ。

とりあえず、仕事は頑張って、頭撫でてもらったヒョンはなんかムカつくから後でお仕置きしよう。

…