だから、言ったじゃん。Ⅶ (ページ38)

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288.終わりページ38

▽ウジン

「トップは常に激しく入れ替わり、トップになるため、勝つためにはなんでも有りに見えるこの世界だけどね。何でもありじゃあないんだよ？」

そう言うとソナの所属事務所社長はため息をついた。

「なんで？私は頑張ってるんだから私の望みを叶えてくれてもいいじゃないっ」

バンッとテーブルを叩いてそう叫ぶソナ。

「私だって普通の望みなら、叶えるさ。君のは、普通じゃない(・・・・・・)。」

社長はピシャリと言い放つ。

「他の事務所のスタッフを辞めさせろ、とか。ビッグアーティストとの仲を取り持て、とか。」

ソナ、そんな要求してたんだ。
普通の人間が大した努力をせず成功するとこうなっちゃうんだなぁ。
ソナは怒りに震えている。

「ソナ、とても残念だよ。」

そう真っ直ぐにソナを見て言う社長は、彼女に解雇通告をして、部屋を出て行った。

「ウジン氏っ、どうにかしてっ！」

「どうにかって？」

「他の事務所を紹介して！もっと大手！」

「無理無理。君さ、皆に断られて、ここに入ったの忘れたの？」

君の言う大手なんてさ。
いの一番に君のこと"いらない"って言ってたじゃん。

「…」

「それに…君の希望を要求していただけで、解雇は有り得ない。なにかした(・・・・・)でしょ？」

「なにか、って。」

「この事務所の社長は温厚で有名なんだ。その社長が君を解雇するなんてよっぽど(・・・・)でしょう？」

俺がそう言えば、彼女は俺を睨んで、

「私(・)はなにもしてないわよっ。」

そう叫んで部屋を出て行った。

まったく。
礼儀も何もあったもんじゃない。
スカウト同席の解雇の意味、考えなきゃ…。
まぁ、あの子は知らないんだろうけど。

「終わり、かな。」

自然とそう口にした。

芸能活動が終わりなのか、もっと先の彼女の人生が終わりなのかは俺にもわからないけど。
この事務所を解雇されたら、ソナはもう芸能活動はできないだろう。
スカウト同席の解雇になったなら、他の事務所がソナと契約することはないし、個人事務所を立ち上げられるほどの金も人脈も彼女にはない。

俺がなにかする前に彼女はすでに詰んでいた。

…