だから、言ったじゃん。Ⅶ (ページ36)

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286.依頼達成ページ36

▽実行犯X

ソナの情報通り、ある音楽番組の収録に来た彼らを追いかければ、仕事終わりのマンネラインの三人が一人の女と待ち合わせをしていた。

一般人にしてはスタイルよく、綺麗な女。
コレは、ソナが騒ぐわけだ。
ソナは自分はアイドルだ！と言うけど、突出したものは何も持っていない。
素人の俺でさえ、そう思うのにアイツは何を勘違いしたんだろうか。
四人は仲良く食事をして、店の前で別れた。

当然、俺は女の後を追った。
警戒心のない女だな。
ひとけのない路地に差し掛かり、俺は女を捕獲した。

「なっ」

叫ばれる前に口をふさぎ、待たせていた車に乗せた。
手早く車の中で拘束する。

「はぁ。」

やっとターゲットを攫えた。
顔を把握していなかったのが時間がかかった要因か。

「へぇ、"依頼者"より上玉じゃん。」

仲間の男が呟く。

「そうだな。だから、だろうけど。」

俺がそう言いながら、ターゲットを観察する。
彼女はガクガクと震えていた。
これから自分がどうなるのか心配なんだろう。

「命までは取らないから安心しな。俺は女をいたぶるのは好きじゃない。」

俺がそう言うと女はほっとする気配を見せた。
ほっとするのは早い。
"俺は"なんだけど…。
危機感がないな。
一般人だからか？

暫く車が走り、誘拐現場から遠のく。
繁華街の入り口で車が止まり、

「じゃあ、あとは宜しく。全部終わったら、依頼人に報告しとけよ。」

と中の人間に声をかけ、車を降りた。
あとは仲間があの女をどうにかするだろう。
なんだっけ？
尊厳を傷つけて、外に出られないようにする、だったか？
ソナの依頼は一応、達成かな。
俺一人じゃ、顔も知らない女を貶めるなんて難しかったから、仲間に依頼料を横流しし、協力させた。
俺は口に出したように女をいたぶるのは好きじゃない。
こう言う仕事は後味悪く、金を積まれたらやるけれど、本当は受けたくないんだ。

ソナは金払いが良かったけれど、だんだん依頼内容が傲慢になってきていた。
自分より美人だからとか、可愛いからなんて理由で他者を貶めるならキリがない。

俺やソナのような人間はいつか罰を受けるだろう。
それも今生を生きるため、仕方ないことと俺は思っているが、ソナはどうなんだろうな。

一般人が稼ぐ以上を短期で稼ぎ、周りからチヤホヤされる。
普通に生きていれば、そうそうあることじゃない。
ソナはアイドルにならないほうが幸せだったかもしれないな。

…