だから、言ったじゃん。Ⅶ (ページ33)

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283.振り回されるページ33

▽

仕事柄馴れているとは言え、自分の目の前には満面の笑みを浮かべるイケメン。

「A、おはよう」

日に日に艶々と溌剌とした幸せそうな笑顔を浮かべるジス。
ちょっとだけ"推し"とかそう云うファンの気持ちが理解できた。
うん、ジスはイケメンだ。

「おはよう、ジス」

「ねぇ、こういうの良いよね？」

眩しい笑顔でそう言うジス。

「こういうの、ってどういうの？」

「朝起きて、愛しいAが居るの。」

いつも思うけど、彼の言葉はストレートだ。

「Aの愛してる僕(・)が朝から目の前にいるんだよ。幸せだよね？」

なんかよくわからないけど、ジスの圧に負けた。

「まぁ、うん、そうだね。」

「だよね？ふふ」

そう言ったジスは私を抱きしめた。
なんだこれ。
寝起きの働かない頭は混乱した。

スキンシップが激しいのも、ストレートな言葉を使うのも、彼はアメリカ人だからで無理やり納得しているけれど、ジスの行動はかなり積極的で、たまに自惚れそうになる。
ジスの周りには私より可愛い子、綺麗な子が沢山居るんだから。
今はまだジスは気まぐれで私を選んでいるだけだって、そう思っておかないと。
こう言う仕事している私がジスの沼に嵌められたら、ミイラ取りがミイラになってしまう。
職業アイドル、侮れない。

▽

『オンニ無事？』

昼にシアから電話が来た。

「ふふ、無事ってなに？」

『先輩達からソナのこと、聞いたの。オンニ、今一人？私、そっちいこうか？』

「あぁ。今は一人じゃないよ。大丈夫。」

そう答えたところでぎゅっと抱きしめられる。
ジスは手早く私からスマホを取り上げるとスマホのマイクをミュートにして、

「A、誰と電話してるの？」

と私に聞いてくる。

「シアだよ。」

私の答えとスマホの通話相手の表示を見た後、ミュートを解除して自分の耳に当てた彼は、

「シア、僕が傍にいるから大丈夫だよ。」

といきなり話し出した。
シアが何を言ったのかわからないけれど、ジスは、

「Aを心配してくれてありがとう。…うん。じゃあね。」

そう言うと電話を切った。
え、切った？
私にスマホを渡すジス。

「ジス、」

「生存確認だったよ。お昼ご飯、なに食べようか？」

ジスはそう言ってキッチンに行った。
ジスのマイペースさには呆れていたけれど、私にかかってきた電話を勝手に切ってしまうんだから困ったもんだ。
シアには後で連絡しておかなきゃ。

…