279.マイペース ページ29
▽
自分を優しく抱く腕と、離さないとばかりに絡められている指。
「あれ…朝？」
カーテンから差し込む明るい光を見て、かなり寝過ごしたのだと悟る。
どうみてもこれ、昼だろう。
昨晩は何故か張り切ったジスが居て、寝るのが遅かったし…。
とりあえず、時間を確認しようとスマホを探そうとしたら、ジスの指が外れない。
外れないどころか、私の体は彼に抱き寄せられ、手はぎゅっと握られた。
「え、」
どうしようかと思っていたら、
「おはよ、A」
そう言うジスの声が弾んでる。
彼は寝起きからご機嫌のようだ。
「お、おはよう。ジス、起きるから離して？」
「え、ヤダ」
「え、」
「休みなんだから良いじゃん」
「でも…」
「もう少し寝ようよ。」
そう私の耳元で囁くジス。
休みとはいえメールチェックをしなきゃいけないし、もしかしたらジョングクから生存確認の連絡が来ているかもしれないし、夜寝付けなくなるかもしれないし…。
「ジスは寝てていいよ。私は起きる。」
そう言って彼の手をやんわりと外せば、
「…OK、なら僕も起きる。」
ため息を付いて、仕方ないなぁ感を出した彼にそう言われた。
え、なんか"私が我儘言った"みたいな感じなんだけど…。
我儘なのか？
ジスは寝てても良いって言ったよね？
ジスの言動に戸惑っている間にジスはさっさとベッドを出て、
「Brunchにする？コーヒーにする？ん〜、今何時かなぁ…」
そう呟きながらキッチンに足を向けていた。
「…」
彼がマイペースなのは今に始まったことじゃないけど、久々に一緒に過ごしているから、驚いてしまう。
そうね、出会った当初からいつだってジスはマイペースだったもんね。
彼のペースにのせられるのは別に嫌じゃない。
一応、"彼なり"に私に気を遣っていることがわかるから。
ただ、彼の勢いに驚くんだよね。
「はぁ」
一つため息を付いて、ベッドサイドテーブルに置いておいたスマホを手に取る。
案の定、ジョングクからカトクが入っていた。
"ヌナ、必要なものある？"
なんだろ。
最近気づいたんだけど、ジョングクはとても面倒見が良い。
私のほうが年上なんだけど、彼は考え方？がかなり大人だから、どちらが年上かわからなくなる。
"今は特にないかな。ありがとう"
ベッドに寝転んだままそう返信していたら、
「A起きるんじゃなかったの？」
とジスがベッドルームに来た。
「うん、起きるよ」
そう言ってスマホを片手にキッチンに向かった。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2023年7月10日 21時
