だから、言ったじゃん。Ⅶ (ページ23)

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273.実行ページ23

▽実行犯X

世の中、金があればなんでもできる。

ソナに沢山の金を払わせて彼女が言う邪魔な女の自宅マンションを調べた。
高級住宅地に建つ、Securityがしっかりしてるマンションだ。

「凄いとこに住んでるよなぁ。セレブってやつか？」

業界ってのは一般人も大金を稼げるのか？

「あの、ここ、入り込めるんですか？」

この仕事の手伝いを依頼した底辺層の男は不安げに呟く。

「何事にも穴はあるんだよ。」

そう答えて、空のダンボールを台車に乗せて運ぶ。

宅配便を装って自宅前まで行き、二人でターゲットを気絶させてこのダンボールに押し込めば、誘拐なんて簡単にできてしまう。
Securityがしっかりしてるマンションに住んでいると、警戒心は薄くなるしな。
自宅前まで来た宅配便を拒否するなんてしないだろうし、宅配業者をマンションの中に入れない事なんてないだろ？
今回のターゲットは女だし、運び出しは苦労はしないだろう。
犯罪なんてものはそこら辺にゴロゴロ転がってる。
どっかの一般人が誘拐され人生を壊されようと、凄惨な大量殺人くらいじゃなきゃ、報道だってされるわけない。
被害者が沈黙してしまえば、犯罪の立証も難しい場合もある。
被害者を沈黙させる方法なんてたくさん有るし、な。

「世の中、物騒だよなぁ。」

なんて呟いて、マンションのエントランスまでの道を歩いた。

▽

「え、は？」

マンションのエントランスに辿り着く前に俺達はガードマンに声をかけられた。

「ご苦労さまです。荷物はあちらで預かります。」

ニコニコと笑うガードマン。
あちらと示されたのは、守衛室のある建物だ。

「いや、お部屋まで運びますよ？」

と言ってみたが、

「このマンションのルールです。お荷物は一括預かりなので、アチラに置いてくだされば大丈夫です。」

と言われてしまった。

なんだよ。
簡単なんて誰が言ったんだよ。
あ、俺か。

結局、俺達はマンションのエントランスでさえ、辿り着くことはなく、空のダンボールをガードマンに預けることになってしまった。

「毎度、」

「ご苦労さまでした。」

ガードマンに挨拶をして来た道を戻る。
マンションに入るのは思ったより大変そうだ。
自宅マンションから出たところを捕まえればいいか。
気をつけていたってマンションから出てしまえば、Securityの有無は関係ないしな。
社会人で一人暮らしならマンションから出ないなんてこと、あるわけないし、作戦変更だな。

…