だから、言ったじゃん。Ⅶ (ページ21)

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271.教唆ページ21

▽MINGYU

その話を聞いたのはたまたまだった。
プライベートの友人達と居酒屋で食事していた。

「なぁ、アレ、アイドルのソナじゃね？」

そう友人に言われ、見れば確かにソナとか言うヨジャアイドルが男と居た。

「芸能人居ても案外気づかないもんだなぁ。お前も普通に俺達と居るから、騒がれないもんなぁ。」

「いや、アレはふつー過ぎて芸能人オーラないんじゃねぇの？」

共にいる友人達が失笑して小声で呟く。
ソナねぇ。何か突出するものがあるなんて話は聞かないけど…。
ただ、デビュー曲はSUGAさんが手掛けたって言うんで、話題になったかな？
BTSの控室にも出入りしているとかなんとか…ジョングクが嫌がってたなぁ。なんて思いながら、頬杖をついて、あちらを観察する。
ソナと思しき女は一緒にいる男にしなだれかかっていて、恋人？かな。

「こんなとこでよくやるよな？」

「人気アイドルでもないから、やりたい放題なのかな？」

コソコソと話す友人達はため息を付いたあと、話題を変えた。
まぁ、興味もないか。
ソナのことなんて気にせず、楽しく会食をしていた。
俺はトイレで中座する。

たまたまソナとその彼の後ろを通った時、彼らの会話が聞こえた。

「ミン・A？」

「そう。その女うざくて…」

「アイドル？」

「違う。BTSのスタッフなの。」

BTSのスタッフのミン・Aって言ったらAじゃないか。
靴紐を結ぶふりをして、しゃがんで彼らの会話を聞く。
Aの名前が出てきたから。
スマホのボイスレコーダーアプリをオンにした。

「その女を壊して欲しい。」

「え、一般人なんでしょ？」

「だって、ウザいし…。一般人なんだから、やりやすいでしょ？」

「まぁ…」

「外に出れないくらい、痛めつけて欲しいの。」

そう強請るように男に身を寄せるソナ。
…。

普通に犯罪じゃん。
あらかた、彼らの会話を録音して、俺はその場を離れた。
普通と言われてるアイドルは、普通じゃなかった。
俺たちより己の欲望に従順で…。

「女は怖いな。」

小さく呟く。
俺になにができるのか、わからないけど。
確実に言えるのは、絶対にAは壊させない。
直接は守れなくても彼女を守らなきゃ。

…