だから、言ったじゃん

08.想いは、されど ページ8

▽Joshua




Aを愛してるんだ。

そう伝えたくても、電話は繋がらない。

Aが居なきゃ、嫌だ。

そうメールをしても、送信先エラーでメールも送れない。
家は引き払った後、カトクも知らない。
彼女の、フルネームも、僕は知らなかった。

キムさんなのか、パクさんなのか、それとも…？

なんでこんなに僕は彼女のことを知らないの？

本当はわかってる。
僕は自分ばっかりで、彼女のことを何も知ろうとしなかったんだって。
彼女が離れるわけないって、変に自信があって、だから、彼女のこと、プライベートの電話番号だとか、フルネームだとか、家族のことだとか、後回しにして、いつか、聞けばいいか。なんて思っていたんだ。
彼女を狙うメンバーを牽制して、目の前に手を伸ばせばすぐ捕まえられる場所に彼女が居たから、変に安心していたんだ。

「ジス、お疲れ様。」

プライベートで、二人っきりの時だけ。
Aは、僕を"ジス"と呼び、普段の敬語も外れる。
彼女のマンションで、だけ。
特別だったのに。
僕は嫉妬して欲しくて、仕事中にソユンヌナが僕を"ジス"と呼ぶのを止めなかった。
仕事とプライベートを分けている彼女がそれを見て、どう思うか、なんて考えてもみなかった。

以前、しつこく僕に言い寄るメイクヌナに、Aが、牽制していた時。
僕は、彼女が"僕"だから、牽制したと思って、わざとメイクヌナの肩を持ったりした。
Aは、そんな僕にため息をついた。
後で二人っきりになった時、彼女は、僕にどうしたいのか、聞いてきたんだ。
二人っきりになるまでずっと、僕のことだけを考えてくれていたのが嬉しかった。
だって、彼女はいつも13人を平等に見ていたから。

「ヒョンさ、良くないよ？わざとあぁ言うことするの。」

ジフナがため息をついて、僕を諌めた。

「でもさ、僕のことをずっと考えてくれるんだよ？なら、偶には良いじゃないか。」

僕はジフナにそう返した。

「後で…後悔しても知らないよ。」

ジフナはそう呟いた。

今なら、ジフナの言葉の意味がわかる。
僕は彼女を大切にしているつもりで、所詮、つもりでしかなかったってこと。
優先順位が僕の気持ちが一番で、彼女のことを考えていなかったってこと。

僕とAは、これで終わりなの？

"貴方とは別れました。さようなら"

そんな過去形で、さようなら。なんて。
僕は了承してないよ。
Aと別れない。
このまま、別れたくない。さよなら、したくない。






…

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