だから、言ったじゃん

43.悲しかったのは ページ43

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私がSEVENTEENからBTSに移って、ひと月。

SEVENTEENは、メディアを見る限り、元気に活動しているし、兄達はちょっと過保護だけど、BTSもしかり。

ただ、現場の雰囲気もスタッフの雰囲気も、SEVENTEENとは違う。
古参スタッフ達は皆、私が兄の実の妹だと知っているから、途中入社(ほぼ兄の我儘だけど)の私に優しいし、あちらで培った能力も評価してくれているので、楽しく仕事できている。

偶に、私を気遣わしげに見るジンさんの視線さえなければ、概ね順調。

"彼と話し合え"とアドバイスした日からジンさんは、オッパ達に私にその話題を出すことを禁じられてるようだ。

私があちらのスタッフだったことは、テヒョンア、ジミナ、グクの三人は知らないから、皆が揃っている場では、ジンさんも話題にできないと思うけれども。

「仕事、辛くない？」

ナムオッパが、撮影の合間に声をかけてくれた。

「楽しいよ。」

そう返せば、ナムオッパは頷く。

「Aのことを考えたら、本当は全然違う職場を紹介できれば良かったんだけどね。俺達がAと一緒に居たかった。」

ナムオッパは、困ったように笑いながら、そう言った。

「私、この仕事は嫌いじゃないよ？」

「でも、前は凄く大変だったでしょ？」

「まぁ。うん。」

「俺達は、ずっとAの側でAを守りたかったんだよ。」

「うん。」

「A、お前は可愛くて魅力的な俺達の自慢の妹だよ？だから、自分を卑下しちゃだめだ。」

「ナムオッパ、」

「前は、疲れて、すり減らして、大変だっただろうけど、ここは、お前の味方しかいないから。」

そう言って、私の頭を撫でてくれるナムオッパ。

「私は、私が悲しかったのは、多分…」

仕事ぶりを皆に認めてほしいとか、褒めてほしかったわけじゃなくて、ただ、疲弊した私に気づいて欲しかったんだ。

察して欲しいなんて、なんて傲慢なんだと思うけれど、でも、"彼氏だった"彼くらい、私の気持ちに気づいて欲しかった。

アイドルはとても大変な仕事で、だから、常に人目に晒される彼らをサポートしてきたけれど…。

「これからは、大丈夫だから。ユンギヒョンも、俺も、ホソクも、居るから。」

優しい言葉と優しい手つきで私を撫でるナムオッパ。
ナムオッパが言うみたいに、"これから"だ。

「ナムオッパ、ありがとう。私、頑張るよ。」

「ん、流石、我が妹だな。」

優しい兄達が居て、私は幸せだな。
しっかり、サポートしなきゃね。






…

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