不思議の国のジョシュア君9th (ページ19)

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◎ALEX

アンがまだM.Mと呼ばれていた時期。

ある音響スタッフが、M.Mに暴言を吐いた。

"正体を隠すなら、誰が歌っても同じだ"って。

多分、彼女は、M.Mの才能に嫉妬して、M.Mに表に出て欲しくて言ったんだろう。
その言葉を聞いたM.Mは、ニコリと笑って、

「誰が歌っても同じなら、あなたが歌えばいい。」

と言った。
それは、ルーカスが席を外していたレコーディング室で、起こったこと。

歌手になりたい人間を腐るほど見てきた音響スタッフたちは、歌手や歌手候補生に発破をかける意味で、苦言や暴言を口にするが、相手が悪かった。

歌手になりたいと全く思っていないM.Mに暴言を吐いたのだ。

皆が、M.Mの言葉を理解する前に彼女はレコーディング室を出て行ってしまった。

「え、どういうこと？」

レコーディング室に戻ってきたルーカスは、その場にいるスタッフに聞く。

これからレコーディングなのに、なぜ、MMが居ないのか？と。

『そこに居る音響スタッフが歌うって。私よりうまく歌えるらしいよ。よかったね。』

スピーカーにした電話でMMと連絡を取ったルーカスに彼女は言った。
顔面蒼白になる音響スタッフ。

「あぁ。アイツがそう言うなら、コレはもう、レコーディング出来ないな。」

ルーカスは、項垂れて呟いた。
MMはその件以来レコーディング室には入らなくなった。
その件で、お蔵入りした曲の責任を取って、MMに暴言を吐いた音響スタッフは、辞めることにしたらしい。

「え、あなたがやめたら、誰が歌手をするの？」

MMにそう言われて、音響スタッフは泣いて彼女に謝った。

"貴女に発破をかけたかった。"
"貴女に表に出て欲しかった。"

「え、残念。じゃあ、また私が歌うの？表に出なくていいなら、歌ってもいいけど。」

M.Mの言葉にスタッフは安堵のため息をついた。
音響スタッフは、辞めずに済んだ。

その件があってから、MMに物申すスタッフは居なくなった。
スタッフ間での申し送りは完璧だ。

Aはスタッフがジョッシュに甘いと思っているが、実際は違う。
スタッフが大事にしているのは我らが歌姫だ。
一度、臍を曲げたら歌ってくれないルーカスの、世界の歌姫をスタッフは大事にしている。

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