やり過ぎた ページ9
ムン・ギオグ
私は何も悪くない。
ムン家の遠戚に生まれた。
遠戚だから、上流階級の誰にも認識されず、また、遠戚だから、その名の恩恵を受けてきた。
上流階級の人間には無視されるが、それより下の人間は、私を無視できない。
ムンの名がある限り、私は上流階級には入れなくとも、生きていけるのだ。
一人娘のチェオンが一目惚れしたと、
欲しいと言った男は一般人あがりの青年実業家だった。
ムンの名を使えば、簡単に手に入るだろうと、ムン・リアの名前を使って呼び出せば、あちらは尻尾を振ってやってきた。
遠戚だから、ムンの名も使えるようになるし、一般人であるお前にも良い話だと言ったにも関わらず、あの男は、"全部断る"と言って、部屋を出ていった。
娘は大泣きするし、あの男は無礼だし、あの男に地獄を見せてやると息巻いて自宅へ帰れば、見知らぬ男が自宅リビングに立っていた。
「なんだ?お前は誰だ?」
私が低い声でそう言うと、男は私を鼻で笑った。
「ムン・ギオグ。お前はやりすぎた。」
男はそう言うと、いつの間にか部屋にいた黒服を着た男達に私と娘は拘束された。
「な、無礼者がっ私を誰だとっ」
そう叫べば、男はニヤリと笑い、
「ムン・ギオグだろう?末端のくせにリア様の名前を勝手に使って、甘い汁を吸いやがって。」
「なっ、」
なんでバレた?
「パク・ジミンに手を出さなければ、静かに余生を過ごせたのにな。余計なことしたな。」
パク・ジミン?あの男が、なんだって言うんだ!
「はっ、知らずに手を出したのか?パク・ジミンはクォンの跡取り娘の男だ。」
「ク、クォンの…」
「まぁ、元々やりすぎたお前は、リア様から、除籍処分が言い渡されている。無能はいらないってさ。」
「…除籍?」
「お前は今から、ムンの名は名乗れない。連れて行け。」
その男の言葉で私とチェオンは自宅から連れ出された。
今まで勝手にリアの名を騙ったことへの莫大な損害賠償を請求され、財産の没収と縁切りを余儀なくされた。
財産だけでは、賠償金が払えず、チェオンを売り、私は名を取られ、無一文になり、社会的に消えることになった。
チェオンがあの男を欲しがらなければ、
あの男がクォンの男でなければ、
私はまだムンを名乗れていたのだろうか。
…
533人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちな | 作成日時:2021年10月8日 18時