あと押し ページ16
リアside
今までずっとほったらかしで、ほぼ向き合ったことのない父と会食なんて…
「ねぇ、ヒョヌ。」
隣を歩くヒョヌに声をかければ、
「十中八九、リア様の予想通りかと」
と、返されてしまった。
「本当、困った人ね。」
ため息混じりにそう呟いた。
父と食事をするつまらない時間。
食後のコーヒーをいただけば、やっと、父は本題に入った。
「リア、最近キム・ナムジュンと仲が良いみたいだが、
彼はお前の婚約者にはできない。」
あからさまなため息をつきながら、言う父に
「あら、それは何故ですか？」
首を傾げて、聞いてみた。
父は焦ったように
「何故ってお前の婚約者はお前と同等の者でなければ…」
自分が傀儡にできるような、頭が良くない人でなければ…
父の意図は言わなくてもわかる。
「ふふ、彼は優秀ですよ？」
私の言葉に父は眉を寄せた。
「優秀か、そうでないかではなく、彼はクォンと仲が良い。」
クォンと仲良くするのをムン家は嫌う。
私もAと仲が良いんだけど。
私に興味のないこの人は知らないんだろうな。
「他の男を見繕う、ナムジュンとは、縁を切りなさい。」
いつになく、強気の発言をする父。
面倒くさいな。
「そうですか。」
小さく呟きながら、自身の腹を擦する。
父はあからさまに目を見開き驚く。
「お、お前、ナムジュンとそこまで…」
狼狽えた父は聞いてくる。
「はぁ」
私は小さく答えた。
令嬢が婚約者以外にそんな簡単に体を許すわけないじゃない。
「なんてことだ。」
父は頭を抱え、何かを考え始めた。
チラリとヒョヌを見れば、顔がニヤけている。
「そこまでいってしまったのなら、仕方ない。
ナムジュンをお前の婚約者にしなければ、お前の価値が…」
父はブツブツ言いながら、ふらりと立ち上がると、
「クォンの娘が婚約発表をしたから、ナムジュンにも釣書が沢山来ているらしいな、早く手を打たねば…」
ふらふらと部屋を出ていった。
そんな父を私もヒョヌもただ見守っていた。
「リア様、いつ、彼とベッドを共にしたのです？」
私達以外誰もいない部屋でヒョヌは聞いてくる。
「してないわね。」
私は正直に答えた。
「あのタイミングでお腹を擦ったのは？」
「お腹いっぱいだなぁと思って。」
「くっ、リア様。最高です。」
グッドサインを出すヒョヌ。
「これで、少しはナムの後押しになるかしら？」
ふふと笑いながら、私はコーヒーを飲み干した。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2021年10月8日 18時
