Stay close beside me.

48.余所見はしない。 ページ48

48.







「あ、BTSだ。」

「流石、格好良いね。」

メンバーは周りを見回して、そう呟く。
他の人に聞かれたらマズイらしく、かなり小声で。
誰某が格好良いとか、スタイルが良いとか、可愛いとか、色々。
今日の仕事は、歌謡祭とか言うもので、会場内にはお客さん以外にも同業者が沢山いるそうだ。

「Aオンニはどう思う？」

とサナに聞かれた。
返答に困るなぁ。
私にとってはジスがこの世で一番格好良いけれど…。

「ツゥイが一番可愛い。」

笑ってそう答えれば、何故かツゥイ以外のメンバーが悶えていた。

「何故…？」

そう呟けば、苦笑いしたナヨンに小突かれた。

「わ、私はAオンニが一番可愛いし、綺麗だと思う。」

ツゥイがそう言うから、

「私のツゥイ、可愛い。」

と言って彼女を彼女の後ろからハグしたら、会場内で"わっ"と声が上がった。
元々ざわざわしていたけど、一気に五月蝿くなった。

誰か凄い人でも会場内に来たのかしら？

「みんな、緊張してない？大丈夫？」

ミスターが私達に声を掛ける。
事務所毎の着席らしく、私達の傍にはミスターが座っている。

「はい、大丈夫です。」

「頑張ります！」

メンバー達が少し緊張しつつも笑顔で、ミスターに答えていた。

出演者が沢山いる中、私の目を引くのは唯一人。
私は人混みの中でもすぐに彼を見つけられると思う。
彼はメンバーと仲良く話している。
やっぱり、誰よりもジスは格好良いなぁ。
今日の衣装も似合ってる！

「…恋する乙女ね。」

ため息を一つついたナヨンは私の耳元に顔を寄せ、呟いた。

「今更じゃない？」

私もナヨンの耳元で囁く。
私達は顔を見合わせて笑った。

するとまた会場内が湧いた。

「え、なに？」

戸惑い、ナヨンを見れば彼女は苦笑いしている。

「Aオンニ、本気で言ってる？」

「いや、オンニは本気でしょう？」

「その周りを一切気にかけないマイペースなところが、Aオンニだよね。」

「…オンニ、凄い」

メンバーがなにか言ってるけどわけがわからない。
ハンズアップして、降参しながらナヨンを見れば、

「後でね。」

と彼女は言ってくれたから、会場が湧いたことや、メンバー達の言葉の謎を解説してくれるのだろう。

それにしてもジスはやっぱり素敵だ。
こんなに沢山の人が居る中で、私が彼以外に惹かれることはない。
私が余所見するをすることなんてありえない。





…

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