兄の先輩 ページ20
☆
「あ、滝沢くん、こっち！」
RIOが個室の扉を開けて、廊下に呼びかける。
「RIO、個室の意味ないじゃん」
呆れたようにそう言いながら、顔面偏差値の高いイケメンが部屋に入ってきた。
「滝沢くん、お疲れ様です。」
RIOは、満面の笑みで、イケメン、滝沢さんに言う。
「ん、お疲れ。」
滝沢さんは片手を上げて、それに応えている。
「初めまして。RIOの妹の坂井Aです。兄がいつもお世話になってます。」
一度頭を下げてから、私が言うと、
「うん、はじめましてだね。Aちゃん。RIOの先輩の滝沢秀明です。宜しくね。」
爽やかな笑顔で滝沢さんは、そう言ってくれた。
丸テーブルの席につくと
「滝沢くんには、Aをちゃんと紹介したくて、時間作ってくれてありがと」
ニコニコ笑いながら、RIOがそう言った。
「うん。RIOのそういうとこ、いいと思うよ。」
滝沢さんは、そう言う。
乾杯をして、食事をしながら、RIOや滝沢さんの仕事の話を聞く。
バラエティにも、トーク番組にも出なきゃいけない、日本のアイドルも大変だなぁなんて思っていた。
「Aちゃんは、どうしてこの世界に入ったの？やっぱりRIOの影響？」
滝沢さんからそう聞かれ、RIOと視線を合わせた。
RIOは、すぐに爆笑しだす。
「あの、オフレコでお願いしたいんですが、」
バシッとRIOを叩いてから、そう言うと、滝沢さんは大きく頷いた。
「私、裏方やりたくて、韓国に行ったんです。」
「え、は？」
「気がついたら、デビューしてました。」
そう言いながら苦笑いすると滝沢さんは、私とRIOの顔を何度も交互に見た。
「Aって、昔から抜けてるから、デビュー間近まで気づかなかったらしい。本当、あり得ない。」
RIOは、そう言うとグラスをぐいっと飲み干した。
「だって、RIOが色んなレッスンしてたから、レッスンって普通なんだと思ってた。」
「芸能界で働くやつは皆レッスンするって？アイドルになる奴だけだっての。」
また笑い出すRIO。
「Aちゃん、こっちで仕事する時、何かあったら力になるからね。」
滝沢さんはそう言うと、かなり強引に私と連絡先を交換してくれた。
「え、はい。宜しくお願いします。」
とりあえず、にっこり笑うイケメンにそう返した。
「あの子、騙されやすそうだけど、大丈夫なの？」
「危機回避能力はあるんで、大丈夫ですよ。」
そんな話を二人が、コソッとしていることには気づかなかった。
…
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作者名：ちな
| 作成日時：2021年9月2日 22時
