FULL MOON 4

譲らない ページ49

☆





賢人と将暉とAと食事してから、別れた。

「頼むね。」

去り際、彼らに一言言えば、二人は指輪をした手を上げた。

「A、俺達のお家に帰ろう。」

そう手を出せば、嬉しそうに俺の手を握る彼女。

「うん。」

二人で仲良く手を繋いで、マンションに帰る。

部屋に入った途端、Aが抱きついてきた。

「亮君、私…」

とAは、呟く。
アレを見たんだな。
日本語だったし。
皆が居る時は我慢していたんだろう。
Aを抱き返して、

「大丈夫だよ。A。」

そう声をかければ、俺の肩に額をつけて、声を殺して泣いているA。

まったく、酷いことをするな。

彼女の頭を撫でながら、

「俺は、いつだって、Aの味方だから。」

そう囁いた。
みんなには、悪いけど、まだまだ従姉妹は渡せないな。
もちろん、従姉妹の同業者たちにも…。
だって、Aは、俺の前でしか泣けないから。
まだまだこのポジションは譲れないかな。
Aは、俺から自立したいらしいけど、まだ手は離してあげない。




▽



「あのさぁ、俺、気分悪いんだけど？」

頬杖をついた健が呟くと、

「健さんは、大人しくしててね？」

隆之介は、ニコリと笑って健に言う。

「あ〜、隆之介も気分悪い？」

「当たり前でしょう？」

「はぁ、OK.OK.隆之介くん、こわぁいからなぁ。」

「ん？健さん、なにかいった？」

「いや、なにもいってないよ」

「火消ししても仕方ないでしょう？事実無根なんだから。さて、誰が広めたのかな？」

そう隆之介が言うと、通信中のパソコン画面から、

「あ〜、〇〇ってアイドル事務所みたいだよ。」

と声がする。

「じゃあ、適度に炎上してもらって…」

隆之介が黒い笑顔を浮かべる。

「あ〜あ、一番怒らせちゃいけない人、怒らせちゃったよ。」

小さく健は呟いた。





…

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