義 務 結 婚 .【 安室透 】

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安室透さんと暮らす事になってから
2日目の朝。

大きく伸びをしながら周りを見渡すと
結婚した事を実感する。





「……ダイヤモンドが埋め込まれてる」





気持ち悪いと思うくらいにぴったりの指輪。

そんな指輪を暫く見つめてから、
リビングに重い足を動かす。







「……Aさん、おはようございます」

「あ、安室さん」



「下の名前」

「へ？」

「昨日から夫婦なんですから、
お互いに下の名前で呼び合おうって

約束しましたよね」








そんな彼の言葉にハッとして
急いで訂正すると静かに笑う彼。

そんな彼に釣られて笑みを零す。








「とおる、さん」

「はい、Aさん。」








照れが入る私に、彼は可笑しそうに笑う。

そんな彼は、思い出した様に
私を机の方へ促す。







「朝食、作っておきました。」

「わ、すみません…！！」

「いいえ、僕が勝手にやっただけですので」


「……有難うございます」








丁寧に置かれたサンドイッチ。
それに合うように彼から紅茶が運ばれる。

いい香りのする紅茶にうっとりしてると
彼は上着を着てリビングの扉に手を掛ける。








「仕事で出掛けるので、ごゆっくりしてて下さいね」


「はい…」





「行ってきます」







彼はそう言うと急いで家を出て行った。

扉が閉まる音を聞くと
変な緊張が解けたように机に突っぷせる。








「………いってらっしゃい、言えなかったな」







なんて、少しの後悔に浸って。


昨日決めたことは、

お互いに下の名前で呼ぶこと
お互いの部屋には勝手に入らない


この二つだけ。
それだけで彼の事は何も知らないし
こんな調子で話す機会も少ない。








「(夫婦なのに他人だなあ…)」









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