私にだけ手を出さない理由【桃】

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「まじで？自分の噂聞いたことない？」

『ない、けど』


自分の噂なんて、聞いたことあるわけないだろう。
そんなに目立つことなく穏やかに過ごしてるっていうのに。
なんでそんな事になってるんだ？と小首を傾げている私のを見て、「変なやつ」って呟いたの、ちゃんと聞いてるからね。渡辺くん。


「あ、それで佐久間は？この講義とってたくね？」

『…遅刻だよ』

「へぇ、まーたあいつ遅刻かよ、なんでそんな遅刻すんだか」


佐久間が遅刻する理由なんて、大体1つ。


『…どうせ女の子持ち帰ったからでしょ』

「……水野も知ってんだ、その話」

『知らないはずないでしょ…』


佐久間は大学内でもかなりの遊び人で有名。
大学に入ってから性格がだいぶ変わった。
明るくて、誰とでも話せるようになったのは大学生になってから。

身長はそんなに高くないけど、人懐っこさに優しいところ、オマケに顔立ちも整ってる。

垢抜けたなぁ、なんて思ってるうちに佐久間はいろんな女の子との噂が立つようになった。


『…昨日もたまたま、ホテルに入ってくとこ見たし』

「まじで？あいつまじで懲りねぇな」

『ほんと、ね』


そんな状態で「なんで起こしてくれなかったの？！」とか言われても腹立たしい以外に表現が浮かばない。
何言ってんだか、その女の子に起こしてもらえ馬鹿。

なんて渡辺くんと話してるうちに教授が入ってきては授業が始まった。
最初のうちは板書を眺めていた渡辺くんだったけど、すぐに飽きたのか、小声で話しかけてきた。

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