幼馴染の仮面 ページ8
考えてみれば、そんなに驚くことじゃない。
前に和の家に行った時、有名なモデルさんが出てきた時だってある。
“彼女なんていない”
そうは言っても、和だって健全なオトコノコなんだし。
傍に居てくれるオンナノコなんて、数え切れないくらい沢山居るんだよ。
あの日。
和が帰って来たのはわかったけど、あたしもバカじゃないからそのまま帰った。
感情的に行動してしまったが、そんな物事上手くいく筈がない。
やっぱりあたしはこれ以上、和に甘えちゃいけないんだ。
この先仕事で会ってしまった時、ちゃんと幼馴染として接していくことが出来るんだろうか。
不安だけが、募っていく。
会わなければ時間が解決してくれるなんて思っていたけど、神様はあたしにそんな時間も与えてくれないらしい。
数日後、出社直後に部長から呼出が掛かった。
「データが上がったから、挨拶も兼ねて事務所まで届けるように」
手渡された和達の新CMのデータ。
会うのはまだまだ先のことだと思っていたのに。
担当のあたしが年始の撮影に同行出来なかったせいで、改めて挨拶に行かされるなんて計算外。
冷静に考えてみればあり得る話なんだけど……。
沈んだ気持ちのままマネージャーの佐伯さんにアポを取り、ランチに向かった。
『そーいえば二葉さん。次のプロジェクト、何だったんですか？』
二「春の新作ファンデだって。コッチは女優サン使うみたいだけど」
“女優でイイ思い出ないんだよね”なんてボヤいてるけど、二葉さんのことだからソツなく熟すんだろうな。
ランチを終えて会社に戻り、事務所に向かう為の準備をする。
商品サンプルもデータと一緒に入れて社を出たのは、約束の1時間前。
荷物も多いしこのまま電車で向かうのは辛いから、高くつくがタクシーに乗り込んだ。
人生2度目の、大手芸能プロダクションの事務所。
守衛さんに挨拶をすると佐伯さんに連絡をしたみたいで、数分後に若い男の子が出て来た。
「すみません。僕がご案内します」
その男の子曰く、佐伯さんは打ち合わせ中で抜けれないから会議室まで来て欲しいとのこと。
彼の背中を追うようについて行くと、エレベーターは7階で止まり、長い廊下を歩いた先にある大きな扉の前で止まった。
「コチラです」
ニコっと笑った彼が開けた扉の先には。
やっぱり予想は見事に的中していて。
驚いた顔をした和の視線が、あたしの姿をしっかりと捉えていた。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年11月27日 11時
