助言 ページ6
“ニノはさ ……、理由なんてきっとなくて、ただAちゃんのことを甘やかしたいんだよ”
“ニノがあんな顔するなんて、今まで一緒に居て見たことなかった”
“それだけ特別で大切な存在なんじゃん”
“それじゃダメ？”
大野さんの言葉が、一つ一つゆっくりと繰り返される。
雅紀くんと大野さんに会った夜。
あの日から、2人の言葉が頭から離れてくれなくて。
仕事にも身が入らない日々を送っていた。
学生じゃないんだし……。
社会人なんだからと自分を奮い立たせてはみるものの、その効果は全くない。
日が経つごとに大きくなる、頭の中で響く声。
そして同時に、和の笑顔が思い浮かぶ瞬間。
小さい頃からあの笑顔が大好きで。
ぎゅっと抱きしめてくれる温もりが愛おしかった。
和のことを考えれば考えるほど、ココロの中で膨らんできた想いは大きくなるばかりで。
このまま時間が解決してくれるまで待とうと思っていたけど、そんなことはきっと最初から無理だったんだ。
ランチタイムに入る前。
隣のデスクの二葉さんからお誘いが入る。
久々に2人で出てきたカフェ。
透との一件以来、年末年始というのもあってバタバタしたせいで、二葉さんとまともに同じ時間を過ごすのは久しぶりだった。
透とのことを聞かれるだろうと予測していたのは見事に命中。
ただ想定外だったのは、二葉さんが透から預かった伝言だった。
“仕事、頑張れよ”
あの時透に言われた言葉。
あたしの仕事を認めてくれてないとばかり思ってた。
今までやってきたことを否定されたような気がして。
二「“オレもコッチで頑張るから、オマエも色々頑張れ”って(笑)」
その言葉に、視界が一気に歪んでしまったのは言うまでもない。
定時に仕事を終えた帰り道。
至る所には和達のポスターや看板があって。
視界に入る度に、大野さん達の言葉や和の笑顔がフラッシュバッグする。
“オマエも色々頑張れ”
その言葉には、きっと和のことも含まれていて。
たくさんの人達が見守ってくれていることを実感したと同時に、和に会いたい気持ちが加速していった。
きっと和にとってはあたしはただの幼馴染だけど。
もう、15年前みたいな悲しい想いはしたくない。
そう思うと、自然と和のマンションへと足を進めていた。
自分勝手に離れて行ったあたしだけど、ちゃんと“ゴメンナサイ”って言うから。
だからもう一度、和の隣に居させて。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年11月27日 11時
