甘え ページ4
酔っ払って覚束ない足取りのまま、あたしは雅紀くんについて行くことで精一杯。
年齢的にも体力があるわけでもないし、アルコールが回って頭の中がグルグル回る。
それでも必死について行くと、大通りから1本裏手の比較的小さなビルの地下に潜って行った。
中に入ると、雅紀くんはキャップとマスクを取って、店主らしき年配の男性に挨拶をする。
「もう部屋で待ってるよ(笑)」
その男性の言葉に、一瞬心臓が飛び跳ねた。
誰が待っているんだろう………。
もし和だったら…………。
そう思うと、今にもリバースしてしまいそうな精神状態。
それでも雅紀くんは、構わず個室の扉を開ける。
「相葉ちゃん……、遅いよぉ………」
雅「ゴメン！ でもさ……、凄い人、拾って来ちゃった(笑)」
雅紀くんはそう言うと、扉の外にいたあたしを中に入るように促す。
中で待っていたのは大野さんだった。
智「おぉ……、こりゃレアだな………(笑)」
『お久しぶりです……………』
今から繰り広げられる事情聴取。
酔っ払ってるあたしは、上手く躱せる自信がない。
雅「じゃあとりあえず、かんぱーい！」
カチンとグラスを合わせて、各々グラスの中のドリンクを口に含む。
いつ、どのタイミングで。
何を聞かれるか身構えていると、大野さんがふにゃんとした笑顔で口火を切った。
智「Aちゃん……、結婚して海外行ったんじゃなかったの？」
いつもの癒し系の笑顔で、あたしの体を抉るような質問。
雅「りぃーだーっ！！ オレが聞こうと思ったのに！！」
雅紀くんの言葉なんて、あんまり頭に入って来なかった。
『結婚は……………、止めました………』
2人の視線が怖くて、顔を上げることが出来ずに返答。
質問は矢継ぎ早に投げ掛けられる。
一つ一つ答えていくと、段々と核心に触れた質問に変わっていった。
智「なんでニノに黙ってんの……？」
このまま隠し通せる訳がないことくらいわかってる。
嫌でも仕事で会ってしまうだろうし、なんせ実家は隣同士だし。
でも今は、会ってしまうと気持ちが溢れてしまうから。
和の優しさに、勘違いして自惚れてしまうから。
だからちゃんと幼馴染として見れるように、今は1人で頑張らないといけない。
和に甘えることなんて、出来ない。
智「こりゃニノも大変だな……(笑)」
雅紀くんと大野さん2人からの言葉が、あたしの頭の中でぐるぐる回る。
それは数日経っても、頭の中から離れてはくれなかった。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年11月27日 11時
