涙の後で ページ28
“オレは、Aのことが好きだから……”
真っ直ぐな和の視線と、和の言葉。
一番願っていた言葉を貰った喜びに、流れていたはより一層スピードを増した。
ずっと欲しかった、和の温もり。
その温もりが、今この腕の中にある。
そう思うと、このまま時間が止まってしまえばいいのにとさえ思ってしまって。
どれくらいこうしていただろうか。
涙の雨が枯れ始めた頃、和がゆっくりと口を開いた。
「今晩さ、このまま泊まって帰りなさいよ？」
その言葉に、あたしの体は一瞬にして固まった。
泊まる………？
イヤイヤっ！！
そんな急展開、絶対ムリっ！！
やっと気持ちが通じたっていうのに……。
これ以上何か起きたら、完全にキャパオーバー。
心の中で騒いでいると、あたしの体をすっぽりと包んでいた和が吹き出した。
「飲んでて送ってやれないから……。今日は何もしねぇよ……(笑)」
ゆっくと、あたしの頭を優しく撫でる。
絶対今、あたしの顔は真っ赤。
恥ずかしくて、穴があったら入りたい。
「先、風呂入ってきな？」
和の言葉に、赤くなった顔を誤魔化すようにバスルームに逃げ込んだ。
あたしがお風呂から上がると、入れ替わりに和が入る。
和が出て来た時には、時計は日付が変わって2周した頃。
あたし達は2人並んでベッドに入った。
最初は同じベッドなんて抵抗したけど。
“初めてじゃないんだからイイデショ？”
という和の言葉に押されてしまう。
確かに数ヶ月前、この家で潰れて、朝起きたら和と一緒に寝てた。
でも今は、状況が違うじゃん……。
無駄に上がった心拍数のせいで、ベッドに入っても落ち着かない。
目を瞑ってみても、勿論眠れる筈もなく。
少しでも心が落ち着ける体制を見つけたくて、ゴソゴソと寝返りを打った。
「どした………？」
眠った筈の和の方から聞こえてきた声。
「眠れない……？」
『ん…………』
意識してるのはあたしだけなのかな……。
そうだとしたら、こんなに恥ずかしいことはない。
「A……？ コッチ向いて ……？」
赤くなった顔を見られたくなくて、和の言葉に首を横に振る。
地味な抵抗を繰り返していると、急に視界がぐるんと変わり、気付いた時には目の前にあった和の薄茶色の瞳。
「何もしないとかさ………、やっぱ無理………」
そう呟いた和の口唇が、ゆっくりとあたしの口唇を塞いだ。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年11月27日 11時
