幸せの残像 ーside Nー ページ27
オレの腕の中で、声を上げて泣くA。
そんなAの温もりに、安堵の溜息が零れた。
久々に感じた、Aを抱きしめる腕の感触。
ゆっくりをAの頭を撫でながら、ふと昔のことを思い出す。
中学生の頃。
少しづつテレビにも出させてもらえるようになってから、学校で騒がれる日も少なくなくて。
ある日の休憩中、Aがいないことに気づいた。
ハルに聞くと、違うクラスの女子に呼ばれて東階段の方に向かって行ったらしい。
オレがAの居場所を突き止めた時には、もうそこにはAしか居なくて。
うずくまって泣いてたんだ。
きっと、Aが泣いているのはオレのせい。
でもこの涙を止めることが出来るのも、きっとオレだけ。
そう思うと、自然とAを抱きしめてた。
“Aはさ……、オレのこと……好き？”
“…………好き”
涙味の、少ししょっぱいファーストキス。
あの頃はさ、恥ずかしくて言えなかった。
ガキの頃から隣に居たAのことが、ずっと好きだったって。
今思えば、言わなくてもわかってくれてるって思い上がってたんだと思う。
言葉にしなくたって、オレの気持ちは伝わってるって。
でも今は、そんな風には思ってねぇよ？
わかってくれてるって思って言葉にしなかったら、それはいつか、大きな溝になって歪みが生じてくる。
照れくさい気持ちは昔と変わんないけど、今日だけはちゃんと言葉にするから。
だからAもさ、オレの言葉を信じてついて来て欲しい。
腕の中で泣きじゃくるAの頭を撫でていた手を止め、もう一度強く抱きしめる。
首筋から香るAの香りを目一杯吸い込んで、早くなった鼓動を落ち着かせるよう深呼吸をした。
ゆっくりと体を離そうと、手を掛けたAの両肩。
一瞬だけ抵抗するかのように強張らせたけど、オレの誘導に応えるように体を離して顔を上げた。
可愛い顔が台無しになっちゃうくらい、涙でグチャグチャなAの顔。
まぁ泣いててもさ、オレにとっては世界で一番可愛いんだけど。
でもやっぱり、Aは笑顔が一番可愛いよ。
「A……？ 今から言うこと、よく聞いててよ」
ひっくひっく言いながら、一生懸命頷く。
「 オレは、Aのことが好きだから……。これからは“幼馴染”じゃなくて……“彼女”として……、隣にいてよ」
あー……やっぱオレにはこんなクサい台詞、全っ然似合わねぇな……(笑)
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作者名：凛
| 作成日時：2013年11月27日 11時
