2人の想い ーside Nー ページ25
ライトダウンされた店内。
窓際に座った2人の姿が、やけに主張して見えてる気がする。
プロデューサーの話なんて耳に入って来なくて、ただただ見つめる2人の姿。
他にも沢山スタッフがいて助かったな………。
冷静にそう思った。
優しい眼差しでAを見つめる男。
その男の言葉に、綺麗に微笑み返すA。
それはまるで、線引きされてるかのように違う世界に見えて。
柄にもなく、この状況に焦っている自分がいた。
いつもだったら、感情的に行動するなんてありえない。
いつでも先に頭で考えて、一番無難な方法を取るタイプ。
でも今日のオレは違った。
「まぁくん、ごめん……。あと、頼むわ」
キャップを被り直して相葉サンにそう告げると、小さな声で返してくれた。
雅「ん……。頑張れよ。あとは何とかしとくから」
その声に安堵して、向かった先は彼女の居るカウンター。
引き寄せられそうになった右手を制して掴むと、Aの瞳が揺れる。
“オレんだから”
この言葉に嘘なんて1つもなくて。
もうこれ以上、Aが他の男のモノになるところなんて見たくない。
オレはガキの時からAのことがすげぇ好きで。
15年経った今でも、A以上に好きになれるヤツなんていない。
だからさ……。
さっきの揺れた瞳だけを信じて、自分のマンションまで連れて帰ったんだ。
『優しくされたら………勘違いしちゃうじゃんっ…………』
零れ落ちる涙を必死に堪えながら、少しづつ胸の内を吐き出すA。
それはどの言葉を取っても、オレへの気持ちが溢れていて。
“Aのこと、想っててよかった”
心からそう思った。
子供の頃は喜怒哀楽が激しくて感情的だったところもあったけど、大人になってからはあまり見せなかったA。
Aの変わってないそんな姿とオレへの気持ちに安心して呆然としていると、言いたいことだけを言って出て行こうとしたAを、無意識のうちに抱き寄せていた。
そんなさ、自分の言いたいことだけ言って逃げんじゃないよ。
オレにだって、話したいことがいっぱいある。
ずっと後悔してたんだ。
アノ時、何で“オレのこと信じて”って言ってやれなかったんだろうって。
こんなにも2人が苦しい想いをするんだったら、最初から離れなきゃよかったって。
でもそんなこと、今言ったってあとの祭り。
だからさ。
今から言うこと、ちゃんと聞いててよ？
1回しか言わないから。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年11月27日 11時
