オレのもの ページ23
「悪いけどさ……、コイツ………オレんだわ……」
背後から伸びてきた手と同時に聞こえた声。
もうあたし、頭おかしくなっちゃったんだって。
和のことが好き過ぎて、幻聴まで聞こえるようになっちゃったんだって。
そう思った。
こんなところに和が居るわけない。
そしてこんな、夢みたいなセリフ。
言ってくれるワケない。
そう自分に言い聞かせながら振り向いた先に見えたのは。
小さい頃から、ずっとずっと好きだった人。
「オレんだから……、これ以上、ちょっかい出さないでね？」
シンくんに向かって、特上のアイドルスマイルで言う和。
真「ねぇ、Aちゃん……？ 本当にこの人と付き合ってるの？」
幾らライトダウンされてるからって、きっとシンくんは気づいてる。
和だってことも。
あたしと和が、付き合ってないことも。
「だからさぁ……、オレんだって言ってんじゃん(笑)」
“オレのもの”
和がそう言う度に、胸の奥がギュッとなって苦しい。
和にとっては、あたしなんてただの幼馴染で。
あたしにとっては傍に居て欲しい大切な人。
でもあたしの想いなんて、この先実ることなんてない。
だって和には、あんなに綺麗な女性が傍に居る。
真「Aちゃん………？」
あたしの答えを求めるように、優しく声を掛けてくるシンくん。
そんなシンくんの姿に、和は一瞬イラっとした表情を見せた。
「別にさ……、オレとAが付き合ってるかとかどーでもいいんだわ。……A、帰るよ」
シンくんに向けられた冷たい視線。
和はあたしを引っ張るように立ちあがらせ、右手を取ったままフロアの中をグングン進んで行く。
ボーイさんから2人分の荷物を受け取り、無言のまま乗り込むエレベーター。
高速エレベーターはあっという間に地上に到着し、和はあたしの手を引いたまま早足でタクシー乗り場まで向かう。
今まで見たことがないくらい、乱暴な和。
「目黒まで……」
運転手さんに告げた場所は、和の住んでいる場所。
そんなとこ、行ける筈ないじゃない。
今すぐにでも降ろしてもらいたいけど、もう大通りを進んでしまっているタクシー。
とりあえずは黙ってついて行くしかなかった。
タクシーの中でも繋がれた右手が解かれることはなく。
右手から感じる、和の体温。
いつもはあったかいのに、今日は冷たくて。
何だかあたしの知らない人に見えた。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年11月27日 11時
