わたあめパンケーキ ページ16
「はよ帰れば」
「帰りません」
「はよ帰ったらええわ、こんなとこおらんでも、どっか行けばええわ。頼んでへんのに押しかけてきて、ボクのとこなんか来ていらん。はよ自分の好きなとこに行けばええ」
「じゃあずっとここにおる」
私は自分の持っていたタオルをリュックから出し、御堂筋くんの目元に持っていって、痛くないように、優しく押し当てた。タオルの端の色が滲みていくのを、御堂筋くんは気にも留めないで怒り続けた。
「キモォ、キモい、キモい。そない、けったいなこと、言わんといてくれる。ほんまキモい。トンチや、ないんやから、キモイで、高橋さぁん」
興奮で呼吸が詰まるのか、もう息継ぎと叱責がごっちゃになっていて、そんな風に怒る姿が可愛かった。
「なんでもするで、ここに居れるなら」「アホ。アホやわキミ、そんなん言ぅた、アカンのや」「御堂筋くんやったらええねんで」「�盒兇気鵝▲▲曚笋蹇�アホやで。アホや。アカンで、ほんまキモイわ」めちゃくちゃ怒ってるのに、私が喋りながらタオルを目尻に触れさせると、シュンと目蓋がしぼんだ。小さな鼻がクンとうごめき、言葉の勢いも連動していて弱くなったり、離れるとまた強くなった。叱れば叱るほど、その様子も子供っぽくて、おかしくなった私が「いひひ」とだらしなくほっぺたを浮かせれば、「アホォ」と不機嫌にいって、チラリと私の顔を見上げた。
外から冷たい突風が吹き込んだ。澄んだ露の匂いがまとわりつく。背中をすり抜けた小風が、私の横髪を舞い上げた。
「……お」
影の中から、かすれた声が聞こえる。
「おかぁさん」
「へ？」
「髪、よぉ似とる」
「おかぁさんと」
「そや。似とるんや」
私の影にすっぽり半身を覆われた御堂筋くんが、左腕を持ち上げた。腕につながれた点滴の管が、ピンと張る。
「これぐらいのぉ……髪やった」
手が、指が私の毛先に届く、もうすぐそこまで伸びていったけれど、届く前に手を引っ込めて、御堂筋くんはまた目をそらした。
「御堂筋くんのお母さんかぁ……会ってみたいなぁ」
「ハァ？ボクのォ？」
「うん、会ってみたいわ。素敵な人なんやろなぁ。御堂筋くん見てたら、よぉ分かるで」
自然に口から出た。でもその台詞で、床を見ていた御堂筋くんの瞳孔が縮んだのがはっきりわかった。
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なおなお - 完結おめでとうございます。何度も読み返してます。読めて幸せでした、ありがとうございました。 (1月8日 2時) (
レス) id: 55ab2936ef (このIDを非表示/違反報告)
御堂筋クゥン推し - 素晴らしかったです (10月18日 6時) (レス) @page20 id: b81b403b28 (このIDを非表示/違反報告)
RIA__(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても素晴らしい作品でした。2年もの長い歳月をかけて御堂筋くんと向き合い出来た心を打たれる素晴らしい作品です。この作品を読めて幸せでした。ありがとうございました…！ (2023年3月2日 22時) (レス) @page20 id: ac39c61119 (このIDを非表示/違反報告)
いと - 出来ることなら、主さんの解釈・言葉の中で生きる御堂筋くんをもう一度、どんな形でもいいので見たいです。それくらいに完成度の高い、素晴らしい作品でした。完結おめでとうございます。素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月17日 19時) (レス) id: 2e3d0ac53d (このIDを非表示/違反報告)
いと - 弱虫ペダルの夢小説の中で、お世辞抜きに1番クオリティ高い作品だと思います。下でも書かれてる方いますが、主さん以上に、御堂筋くんにここまで向き合って下さった作者さんはいません。もう何回も何回も読み返しています。 (2023年1月17日 19時) (レス) @page19 id: 2e3d0ac53d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2021年2月27日 20時
