がけっぶちに咲くキキョウ ページ44
私は結局、おばあちゃんを超えるような写真は撮れなかったんだ。
「良い写真とるよねアンタ、がんばればもっともっと良い写真撮れるようになる」といって頭を撫でられたのは7歳の時。
「おばあちゃんより、ええ写真とれるかな？」と幼い私が尋ねると、
「どうやろねぇ」とおばあちゃんは笑っていた。
「絶対おばあちゃんよりええ写真撮るで」って言うと
「そら、楽しみな」と勝ち気に笑った。
あの頃の写真家は、もういない。おばあちゃんは私の写真を見ても、もう何も言わなくなった。無理に感想を引き出しても「何これ」「変なのォ」とはしゃぐだけだった。
おばあちゃんは、私が超える前にいなくなった。
私は窓を開け、目を力強くこすった。蒸し暑さが体にまとわりつき、熱が頭に集まる。癖で肩の髪を払おうとしたが、そこには何もなて、ただ短くなった毛先が風に揺れるだけだ。
もう一度、御堂筋くんの電話番号を押す。
「ピーっという発信音のあとに、お名前とメッセージをどうぞ」
出なかった。それでいいと思った。
ピーーーーッ。
「高橋Aです」
めいいっぱいの空気を吸い込むと、鼻の奥がツンとした。
「み、御堂筋くん」
ため息みたいな声が出た。
「好きです」
それから堰が切れたように、息が続いた。
「好きです、好きでした。４月に、最初見たときから。好きです、頑張る姿が、全部好きでした。よう言い出せへんかったけど」
喉が震え、唇が震え、視界が霞んだ。夜風を飲みこんだ。肺に冷えた空気が流れ込み、それに押し出されるようにして目から冷たい雫がボロボロこぼれ落ちた。
「この前、終業式の日、傷つけてごめんなさい。私、ずっと謝れなかった。ごめん、あんなこと言って。許してほしいわけちゃうねん、ちゃんと、言わせてほしいくて。ホンマ最低なことした……ごめん御堂筋くん。自己満足みたいになるけど、ごめん。私が悪いから、全部私が邪魔したせいにしてええから、もし……どこかにいるなら戻って。京都なんか来てもええことないよ。一番速くゴールに辿り着くのは御堂筋くんやろ。御堂筋くんが一番速い、誰よりも速いよ。周りが何いうても、関係ない。途中経過がどうなっても、勝負は最後に決まるもんやろ。今決まったわけじゃないんやろ。御堂筋くんは勝つよ。絶対勝てるよ。ずっと撮ってた、私が保証します、応援してます、捨てれるものは全部捨てて、勝ってください、だから……」
手の甲を頬に押し付ける。
「お守りも捨ててください」
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niko(プロフ) - 続き楽しみです！！ (2021年2月24日 18時) (
レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！面白いです！！！応援しています！ (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました！応援しています！次の更新楽しみにしています頑張ってください！ (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます！無理せず頑張ってください！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています！ (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2020年10月9日 22時
