つぐなうロベリア ページ39
それから幹ちゃんは教えてくれた。京都伏見のHPには新聞部のWEB記事が掲載されていること、その記事に自転車部がいかに厳しい練習を重ね、選手が振り回されているか、それがワンマンな一年生部長の指示で、辞めていった部員もその態度に『自転車をわかっていない無茶苦茶な練習内容、インターハイが不安だが、負けても無理はない』と疑いと不信感を述べている、ということ。
聞いてすぐに幹ちゃんとの電話を切り上げた。幹ちゃんは引きとめなかった。
私はHPを確認し、すぐLINEを開いた。メッセージを途中まで打ってから、全部消して、受話器のアイコンに触れた。
着信音が2コールだけ鳴り、「はい、もしもし」と凛とした声が返ってきた。
「こんな夜中にどうしたん、高橋さん」と部長が問う。
私はつばをひとつ飲み込んで、やっとの思いで声を出した。
「HPの記事、見ました」
「へ〜ぇ」部長は大袈裟に頷いている、ような気がした。
「取り下げてください」
「なんや。ははは、御堂筋に言われたんやろ」部長は面白そうに言う。
「そうじゃないです」私はその物言いにカチンときて、つい声が低くなった。
「じゃあ自分の意思で?悪いけど、掲載は顧問の先生がやったから、取り下げるのも先生に言うてもらわなアカンわ」
「顧問の先生を説得したのは部長ですよね」私が尋ねると、部長は「うん」とすんなり答えた。
「先生にありのままの高校生の姿を伝えるため、載せさせてくださいって言うたら、あっさり掲載許可くれたわ。先生の間でも、割とヘイトニュース、需要あるみたいやわ」
「そ、そんな」
「高橋さんが終業式の日に手伝ってくれたおかげで完成した記事やで、あれ。写真撮ってくれてありがとうな。記事には結局その写真出せへんかったけど」私の写真がどうなったかは、どうでもよかった。
「なんであんな風に書いたんですか。あれじゃ、もし、結果が出せなかったら、全部御堂筋くんのせいみたいに、読んだ人は思うじゃないですか」
「実質そうやろ。俺、嘘でも書いてた?違うやろ、むしろ今まで書いた君の記事の方が美化しすぎてた。御堂筋の正体を、俺が暴いたまでや」
「正体って、そんな。御堂筋くんは、いち部員として……」
「高橋さんって意外と性格悪いな」
鼻で笑いながら、部長が口調を強めた。
「え?」
「石垣や他の部員が御堂筋の言いなりになって苦しんでるのに、なんとも思わんかったん?」
攻撃的な物言いに、私は慎重に言葉を選びながら答える。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです!! (2021年2月24日 18時) (レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました!!面白いです!!!応援しています! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました!応援しています!次の更新楽しみにしています頑張ってください! (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます!無理せず頑張ってください! (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています! (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杞憂 | 作成日時:2020年10月9日 22時