あさやけが前ぶれだ ページ32
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JR京都駅は祇園祭の客でごった返していた。
祇園祭は７月の間行われる京都市の一大イベント。この時期は駅からたくさんの観光客が市内と出入りする。今日は祭りの最終日だからか、なおさら人が多い。
JR京都駅自体、市内でも有数の巨大建築物であり、観光地。鱗のようなガラスの巨大屋根は人々の目を釘付けにする。否が応でも顔をあげる客の足は止まりがちになり、人の流れを滞らせた。
特に目の前に京都タワーを望む、烏口(中央口または正面口)の改札とドーナツ型の市バスローリーとの間には、観光客の太い動線ができていたからいっそう混雑した。
賑わう群衆は波となり、祭囃子か群衆の足音かが轟々しく夜中まで鳴り続ける。
私と父は荒波に揉まれながらJR京都駅の烏口からバスに乗り継いだ。騒々しい祭りの渦中から離れて、40分ほど経った。誰もいない2階建ての屋敷に帰ってきた。玄関の電気をつけ、私と父は真っ先におばあちゃんの部屋に向かう。
おばあちゃんの部屋は玄関に入ったすぐ右横にある和室だ。父と一緒に思い障子を開け放った。照明から垂れた紐を引く。カビの湿った匂いが鼻に流れ込んだ。おばあちゃんの部屋はいわゆるゴミ屋敷のようだった。10畳ほどの和室。部屋中、新聞や黄ばんだコピー誌の束が天井まで積み上がっている。おばあちゃんは新聞と週刊誌の収集家だった。
私が中学の時、京都の家に越してきた頃からおばあちゃんの痴呆は始まってはいたけれど、絶対に譲らないことがひとつだけあって、それが「勝手におばあちゃんの和室に入らないこと」「新聞の束には指一本も触れないこと」だった。
「ここに道ができてる」父が指をさす。辛うじて畳が見え、足の入る隙間があった。「ここから、どんどん捨てていこう」
もうおばあちゃんはきっとこの部屋に帰ってくることはない。
昨日、そう父に母は言い放ったらしい。生前整理を私と父に任せた。らしい、メールで。
自分や父も同意していたから、よけいに遠慮なくゴミ袋へゴミを突っ込んでいけた。
おばあちゃんの部屋を片付けているとアルバムや虫が出て来た。逃げては捨て。逃げては捨てるを繰り返し漁っていると、縦長い封筒が見つかった。のりで閉じた継ぎ目から独特のカビ臭さが漂う。ひっくり返すと、表側に文字が二つ並んでいた。
「遺書」だった。
息を飲んで新聞の壁を見渡した。
私はゴミ屋敷みたいな部屋の真ん中にいた。隣のゴミ袋は12個目。私はこれ以上虫が現れないことを確認して、遺書を開いた。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです！！ (2021年2月24日 18時) (
レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！面白いです！！！応援しています！ (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました！応援しています！次の更新楽しみにしています頑張ってください！ (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます！無理せず頑張ってください！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています！ (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2020年10月9日 22時
